製造現場の本国回帰の流れから見る中国生産の問題点

2012.12.07

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AppleのクックCEO、「来年には”メイドインUSA”Mac」と発言

Apple CEOのTim Cook氏がMacの一部をMade in the United Statesにする予定だと語っています。これは非常に面白い流れで、実のところ私たちが輸入代理店をしているQuirkyも一部の製品をアメリカで開発製造することを発表し、すでにCratesという製品を作り上げています(日本未発売ですみません。準備はしています)。そして、みなさんもご存じの通り、私たちのSimplismブランドからも次元シリーズという純日本製ラインナップがあります。

Appleと同列に語るのは痴がましいところではありますが、Quirkyもそして、Simplismも一部とはいえ本国回帰しようという流れがあり、実はこれは多くの製造業で少しずつ発生していることです。今回のAppleの件も含めて、少し思ったことを書いてみたいと思います。

・中国と国内生産のコスト差が縮まっている

中国で生産する製品は、少品種大量生産が一番向いています。Appleくらいの規模になればスケールメリットも出せますが、QuirkyやSimplismなどはそこまでの物量にいかないために、本来の意味のスケールメリットはでません。

見積もりを取れば、国内と比べれば価格差としては発生するのですが、実はそこには見えないコストがたくさんかかってきています。たとえば、不良率の高さによる廃棄コストやQCにかかるコスト、コミュニケーションにかかる時間や試作の回数、開発や検品その他で渡航する費用、さらには輸送の監督や運賃などがあります。もちろん、日本ならすべて問題がなくて中国なら問題が起こるという訳ではありませんが、日本と中国での生産を経験した中ではこれらは事実として存在します。

それぞれのコストについて厳密に計算するのは非常に難しく、本当のコスト差がどれくらいあるのかはわかりませんが、実のところそれほどの価格差はないのではないかという感覚があります。

・人件費、運賃や納期

中国生産の一番のメリットは物価と人件費の安さですが、みなさんもご存じの通り、人件費は年々上昇していき、これに伴って素材のコストも上がってきています。また、中国政府がずっと押さえてきた人民元高も徐々に市場に合わせざるを得なくなってきており、だんだんと中国からの輸出に対する為替メリットも少なくなってきています。

経済成長していく中で、これらのコストが上がっていくことは、中国にとっては決して悪いことだけではないのですが、前述のように世界の工場として経済を成り立たせるビジネスモデルからは脱皮する必要が出てきていると思います。アメリカなどの先進国のようにどこかで製造業からITやサービス業にシフトしていく必要があるのではないかと思っています。

また、中国生産の場合には日本で販売する場合には当然ながら国際運賃がかかってきますし、これは年々上がる一方ですしサーチャージも別途かかるようになってきました。素材によっては関税もかかりますので、そこも含めてコスト算出をしていく必要があります。

納期についても、日本国内で考えれば、出荷されれば確実に翌日に到着しますが、海外からですと飛行機を使っても3日から4日、通関などで検査されれば1週間以上かかります。これらを考えると、在庫を積んでおかなければいけなくなるためにリスクが高まります。

・開発のスピード

見えないコストのひとつが開発のスピードです。先日ワールドビジネスサテライトでも紹介していただいた時にも出ていたように、1週間の遅れなどは膨大なビジネスチャンスのロスになります。つまり、スピードはコストであるとも言えるわけです。

そう考えたときに、中国の技術力は段々と高くなっているのは確かですが、まだまだこちらが望むものになっていない場合が多く、一番の問題は自発的に問題を解決したり提案をしていく、ということがありません。また、簡単にできないと発言したり、要求に達しない製品を平気で提出してくることもあります。結果として、開発が遅れ、生産が遅れ、発売が遅れるという自体になったときには失うモノは大きいわけです。これらを製品の単価に按分するとするとかなりの金額になる場合があります。

Appleほどのレベルになれば、請負工場のレベルも違いますし、供与する技術力や機械設備への投資なども桁違いですし、開発のスピードも段違いに早いとは思いますが、iPhone 4を出したときのホワイトモデルの発売の遅れは、中国の技術力では当初解決が不可能と言われ、歩留まりがものすごく悪い状態で生産を続けて赤字を産み続けていた(請負工場が、ですが)と聞きます。

・愛国心とマーケティング的アピール

正直、ビジネスをしているとはいえ、やはり私であれば日本を愛していますし、Tim Cook氏もアメリカを愛しているのだと思います。そして、自らの生まれ育った故国の産業を少しでも手助けできればと考えるのは当然です。Appleほどの競争力があれば、アメリカで生産してもここまで書いてきたようなコストを勘案するのであれば、コスト的にはそれほど変わらずに、なおかつマーケティング的には大きくアピールできると思います。そしてなにより、自分たちが誇りを持って製品を販売することができるというモチベーションは会社全体の士気に大きく影響します。Appleは世界一の時価総額企業になりましたが、アメリカの雇用を生んでいないと揶揄されたこともありますので、そこがアメリカを愛するTim Cook氏には引っかかっていたのではないでしょうか。

この流れが、Appleの主力製品群にも波及していくのかは今後の動向を見守りたいと思いますが、中国という工場で作ることが本当に競争力を産むのかに疑問符が付いてきているということは確かだと思います。

我々が日本で生産する次元シリーズは「日本でしかできない製品」ということで今後も日本で作っていきますのでほんの少し事情が違うと思いますが、Appleの動き、そしてQuirkyの製品ラインなどから興味深いなと思っています。

このブログを書いたスタッフ

プレジデント

ほっしぃ

音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。

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