サグラダ・ファミリアと壮大な芝居

2013.02.28

投稿者 : ほっしぃ

Barcelona01.jpg

その日の夕食はスペイン料理を堪能しようと地元で古くからやっているというレストランに行ったものの、期待していたような味でもなく、シャンパンのアルコールで誤魔化しながら帰途についた。この時期のバルセロナはほとんど日本と変わらない気候で、この日も冷たい風が身体を突き刺していたが、温かい珈琲にありつきたいという思いから、近くのスターバックスに寄ることに決めていた。

バルセロナといえばガウディがすぐに出てくるほど有名な建造物が多いのだが、宿泊しているアパートメントから5ブロックほど離れたところに、一番有名とも言えるサグラダ・ファミリアがある。そのすぐ脇にスターバックスがあるというのはGoogleマップで調べが付いていた。

地下鉄で近くの駅まで行き、そこからスターバックスを目指していると、サグラダ・ファミリアの雄大な姿が見えてきた。100年以上もの間、常に工事をしているといわれているこの建造物は、いつまでも完成しない工事の代名詞となっているくらいだ。夜のライトアップはクレーンすらも美しく浮かび上がらせていた。

私は愛用のFUJIFILM X100を取り出し、いくつか写真を撮っていた。このカメラはクラシックなルックスなのにデジタルなカメラで、モノとして持つことがイヤではない数少ないカメラだ。そして、比較的明るいF2の単焦点レンズを備えているので、こんな夜でも手持ちで撮ることができる。

いくつかアングルを変えながら写真を撮っていると、近くの観光客風の男が近寄ってきた。身なりとしてはあまりキレイでは無いものの、ショルダーバッグとカメラを抱えているその男は、かなり訛った英語で写真を撮ってくれとせがんできた。さすがにこのあたりは観光客も多いはずで、写真を撮ってあげること自体には何の抵抗もなかったので、数枚撮ってあげた。観光に来ているというのに、ものすごく古くて小さいデジタルカメラを使っているのは少し気になったが、以前にドイツでも同じようなことがあったので、これもあまり気にならなかった。

写真を撮り終えたので立ち去ろうとすると、地図を取り出してきてこれからここに行きたいと指し示してくるのだが、そこは歩いて行けるような距離ではないし、夜の10時頃にそんなところに行っても観光にならないだろうと思ったのだが、相手が片言の英語だったということもあってとりあえず行き方だけは地図を見て教えてあげた。

その時、背後から英語ではない外国語で声をかけられた。普通に考えるとスペイン語なのだが、その時にはあまりスペイン語だという認識はなかった。振り返ってみると、目の高さに警察手帳のような写真入りの身分証明書を提示している、背は私よりも高く、少しくたびれた男が目だけは鋭く光らせながらなにやら話し続けていた。その後ろには背の低い男が、これも身分証明書を提示して黙って立っていた。

こちらが英語でスペイン語は話せないというと、それほど上手ではない英語で「ここで何をしているんだ、ここらへんは犯罪が多くて危ないので早く帰った方が良い」というような趣旨のことを伝えてきた。そして、「君たち2人は友達か」と尋ねてくるので、たった今ここで出会って写真を撮っていただけだと話すと、「念のため持ち物検査をさせて欲しい」というので、バッグの中身を見せていると「薬物の売買もよく行なわれているので」というような話をしてきた。「お金はどれくらい持っているのだ」というので所持金を見せた。私はユーロは財布に入れずに別途封筒にしまってあり、日本円などが入った財布はアパートメントに置いてきていたので、実際のところバッグには50, 60ユーロくらいと展示会のバッヂくらいしか入っていなかった。「スリも多く出ているので盗まれないように」とその男がバッグに現金を戻そうとしたときに、突如叫び声がした。

旅行者と思っていたイタリア人が脱兎のごとく全力で逃げ出したのだ。叫び声は、後ろに立っていた背の低い警官の方で、なにやら叫びながら追いかけていく。そして、私の方を見ていた背の高い警官もおそらく「待て!」というような叫び声と共に走って追いかけていった。

その後、数秒の間は、あのイタリア人は実は犯罪者だったのかと、動転しながらも考えていたのだが、数分経って我に返ると、これは壮大なお芝居だったのだと気づかされた。そう、この3人はグルになって私を騙していたのだった。私のバッグにあった現金をうまく取り上げるために。

テレビドラマなどで何か悲しいことがあるとすぐに雨が降ってくるシーンがあるが、現実にそんなにタイミングよく雨が降ってくることなどないとずっと思っていたが、この時、少しの間突っ立ってそれまでのストーリーを考え直していた後に帰ろうとしたら、冷たい雨が降ってきた。まるで、この間抜けな私をあざ笑うかのように。

というわけで、ちょっと物語風に書いてみましたが、ようは「お金を取られてしまいました」というひと言で終わるのをドラマ仕立てにしてみたわけです。しかし、スリが横行しているから気をつけてとさんざん言われていたのに、コロッと引っかかってしまうのだから間抜けですよね。でも、これってスリではないので、強盗にあたるんでしょうか。

幸いというか、そんなにたくさん現金があったわけでもなく、財布とは別に管理していたので被害はかなり少なかったのですが、「間抜け」という心の痛みの方が大きいですね。あー、悔しい。

このブログを書いたスタッフ

プレジデント

ほっしぃ

音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。

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