Jawboneとの思い出「Vol.1 出会いから、日本へ導くまで」

2017.09.10

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もうすぐではないかと言われ続けて、それでも決定的な瞬間には至っていなかったJawbone(ジョーボーン)がとうとう虫の息だということで、有名なベンチャー企業でかつ企業価値、投資金額が巨大だったところからいろいろな記事が出ています。

活動量計「UP」のJawboneが会社清算。CEOらは新会社Jawbone Health Hubへ移行 – Engadget 日本版

瀧口範子のシリコンバレー通信 – 老舗企業の破綻が示す、ウエアラブル市場の競争激化:ITpro

ウェアラブルはオワコンなのか? Jawboneが倒産し、Fitbit, GoProも絶不調 | freshtrax | デザイン会社 btrax ブログ

それにしても、報道の通りにJawbone Health HubというところにCEO含めて従業員が移行して、負債だけを抱えてJawboneという会社の方を清算するというのは、いわゆる民事再生法のようなカタチで生き残っていくのだろうと思いますが、そこに未来があるのでしょうか。

さて、なぜJawboneの思い出という記事を書きたくなったのか。もしかすると、NuAnsNuAns NEOなどで当社のことを知った方はJawboneを日本に持ってきたのが当社だったということをご存じないかもしれません。私にとって、Jawboneの輸入販売は当社の11年における歴史の中でも、Simplismブランドの創設、NuAnsブランドの創設、NuAns NEOプロジェクトの次くらいに大きな出来事だったといえます。

2010年12月16日に日本における総代理店契約(日本での独占的販売権)を締結して、日本での最初の製品「ICON(アイコン)」を販売開始しました。ここに至るまでかなり多くの時間を費やしいろいろなストーリーがあったため、ここでJawboneへの追悼歌のつもりで始まりから終わりまでの思い出を書いてみようと思いました。

かなり長くなることが予想されるため、ちゃんと書き終われるか心配ではありますが、今は書きたいという衝動に駆られているため、一気に書いていってみたいと思います。

Headset.jpg

初めてJawboneというブランド(当時はALIPHという会社名でした)を知ったのは、今は亡きMacworld ExpoというApple関連の展示会でした。そこで、格好良いBluetoothヘッドセットがあることに気づきました。まだiPhoneが出てくる前の話ですから、10年以上前の事です。

日本ではそれほどBluetoothを利用したワイヤレスのヘッドセット(ハンズフリーと呼ばれています)は普及していませんでしたが、当時海外では特に車を運転するという事もあってかなりの人が使用していました。日本でも今では交通違反となりましたが、携帯電話を片手に持っての運転は非常に危険なのと、実際問題結構疲れるということもありましたので、車で通勤するアメリカなどは割と必需品といってもおかしくなかったのです。

それまでのハンズフリーのヘッドセットは日本人が見れば特に未来的な感じで、テクノロジー感が満載のデザインと素材でした。ピカピカ光ったりもしていました(今でも光っているヘッドセットありますね)。しかし、Jawboneのハンズフリー機は、イヴベアールという世界的にも著名なデザイナーのデザインで、恐ろしく格好良かったのです。EYEWEARが眼鏡をファッションとしてとらえていこうというのになぞらえて、EARWEARということでテクノロジーだけではなくお洒落に使おうというコンセプトでした。まず、そこに一目惚れしました。実際、いまだにこれ以上格好良いヘッドセットって無いと思います。

Headset_color.jpg

さらに、Jawboneという名前は顎骨という意味であるというところからも想像できるとおり、骨伝導の仕組みを利用した強力なノイズキャンセルシステムを搭載していました。その名も「Noise Assassin」という、これまた格好良い名前でした。

今でも鮮明に覚えていますが、その場で1台購入してみてホテルに戻り、通話をしながらトイレの水を流すテストをしてみると、まったくそれが分からないのです。これは本当に衝撃的でした。格好良くて、なおかつ機能が優れている、という私の大好きなパターンです。私はデザインだけ美しいというのはそこまで興奮しないタイプで、そこにもうひとつ機能性だったり、便利さだったり他の要素も欲しいのです。Jawboneはさらに、パッケージもめちゃくちゃ格好良かったのです。

Package_All.jpg

イヴベアールは天才的なデザイナーで、その後に話してみると、製品だけをデザインしてはデザイナーとしての仕事は未完成で、製品を構成する素材から工法、マニュアルもパッケージも、カタログからウェブサイトまですべてをデザインすることが本当に製品を作り上げることだということでした。まさにその通りで、今思えばその考え方が今のNuAnsでの細部のこだわりにも繋がっていくのだと思います。

どうしても、この製品を日本に届けたいと考えました。当時は自社製品はまだあまりやっていなかったということもあって、海外製品を日本に紹介していくビジネスの中でも、Jawboneには大きな未来を感じました。

しかし、彼ら自身は展示会に出展しておらず、コンタクトもまったく分かりませんでした。まずは思いつく一番簡単な方法でウェブサイトからメールで問い合わせてみました。しかし、見事にまったくレスポンスがありません。ここらへんはアメリカの会社ですね。日本の会社だと何かしらは返事をしてくれるのですが、完全に無視です(笑)

次に、パッケージに記載されていた住所に行ってみるという突撃作戦です。幸いにも、Jawboneのオフィスはサンフランシスコから近く、展示会のついでに寄れるくらいの場所でしたので、アポイントもなく突撃してみました。当然と言えば当然なのですが、セキュリティもガッチリしていて、受付の内線電話であっさり断わられるという、今思えば当然の結果でした。

それでも諦めきれずに、門の外で出入りしている人に声を掛けていると、なんとひとりの人が話を聞いてくれて、セールスの人を紹介してくれるというのです。

今すぐ写真が出てこないのですが、Jawboneのオフィスはものすごく格好良くて、今のIT系のオフィスの先駆けのような形だったと記憶しています。ミーティングルームに案内される通り道で働いている人を見ると、なんと我々が販売をしているBlueloungeの製品を使っていました。各デスクに置いてあったので、きっと大量に購入したのでしょう。後に、Blueloungeのデザイナーに確認したらあっさりイヴベアールと知り合いだというので、そっちから紹介してもらえればもっと早い道のりだったかもしれません。

さて、紹介してもらったセールスの方の話によると、Jawboneはまだまだ小さい会社で50名ほどの従業員で、世界展開をしようとはまだ考えていない。国内で非常に盛り上がってきていて、まずはキャリアなどとの契約やApple Storeとの取引きをしていくので手一杯であるということでした。

我々がいくらやる気でも、Jawbone自身がまだそのタイミングではないということであれば、残念ながら引き下がるしかありません。その時が来たら、必ず役に立つので覚えておいて欲しいと伝えて、その時はミーティングを終えました。帰りにいくつかヘッドセットをあげようと言ってくれた時に、どれが良いと聞かれて買わなかったものすべてをちゃっかりともらいました(笑)

その後も定期的にメールをするも、一切返信は無く(アメリカの会社はそんなものです)、翌年もMacworldに出かけた時に会社に行くからと強引にアポイントを取っていくも、まだその時じゃないとの回答。ただ、その時には今年には動き出すというような話でした(Macworldは1月)。

その後、その担当者の人のメールが通じなくなり、ちょうど他に会っていた人に聞いたら辞めたということで、これまでのコネクションを失いました。しかし、新たに海外展開の部門ができた時にどこかになにかの履歴が残っていたのか、新しい担当者がこれからについて話し合いたいということで、すぐに飛び込んでいき、渾身のプレゼンテーションを行ないました。

本来はいろいろな会社を見て、可能性を確認したり、プレゼンテーションを聞いたりして総合的に代理店契約を交わすのだと思いますが、まだまだJawboneもそういうビジネスをよく知らなかったのか、私が2年越しで来ていたということもあり、日本を任せようということになりました。実際のところは分かりませんが、当社以外は検討していなかったのではないかと思います。

と、ここまで一気に書いて、これは壮大な話になるぞ、と気づきました…。いったん、ここで代理店契約をするというところまで書いたところで、次回につづくとしたいと思います。

[Jawboneとの思い出 バックナンバー]
・Vol.1 出会いから、日本へ導くまで
・Vol.2 ローカライズとビジョン
・Vol.3 驚きの新製品JAMBOX
・Vol.4 驚きを超えた衝撃のUP登場
・Vol.5 終わりの始まり
・Vol.6 終わりの終わり

このブログを書いたスタッフ

プレジデント

ほっしぃ

音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。

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