Jawboneとの思い出「Vol.6 終わりの終わり」

2017.11.05

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Jawboneの破産のニュースをきっかけに、せっかくだから思い出を語ってみようと思い立って書き始めたものの、それなりにいろいろな出来事があって書いているうちに長くなりました。その間に、ニュースなどでも取り上げていただいて、輸入代理店としての裏話が面白いということでたくさんのアクセスをいただきました。Jawboneとの付き合いの長さから考えると、もっともっとたくさんの思い出があるのですが、それをすべて書き出しても意味がありませんので、今回は最終回として「終わりの終わり」で一区切りとしたいと思います。

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「終わりの始まり」の中でも書きましたが、Jawboneとして成長を担う製品であるライフログリストバンド「Jawbone UP」に品質問題が発生するも、たくさんの投資家から莫大な投資を受けているため、成長を止めるわけにはいかなかったところから歯車が狂い始めました。初代の時には、返金も含めたかたちでの販売中止を英断して、それは潔いということで世間から受け入れられました。しかし、その次の世代も満を持して、堅牢性や防水性を大いにうたってリターンマッチを挑んだものの、初代よりは減ったとはいえ、まだまだ高い不良率になってしまっていました。

それでも、取扱い店舗を増やしていくこと、もっと販売すること、そして当社に対してはもっとオーダーをすることを求めてきました。実際には、Jawboneのセールス担当者も劇的に売上を伸ばすのは困難だと分かっていたのです。

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象徴的なストーリーをご紹介しましょう。あるとき、アジアを統括するというセールスのマネージャーがどこかからヘッドハンティングを受けてやってきました。そして、アジアの売上を2倍にするという計画を立てました。そして、それをJawbone本社の経営陣にプロモーションや人員体制なども含めてプレゼンテーションをしたそうです。しかし、経営陣は2倍では少ない、アジアはもっと伸びる、ということでプランの作り直しを指示したそうです。そうしたところ、このマネージャーはなんと5倍にするというプランを出しました。

元々、ある程度国ごとの売上やセールスプランなどを詰めて提出した計画を、あっさりと否定されて、2倍を5倍にするという計画です。どうやると思いますか?

本人に聞いてみると、「そういう計画を提出しなければ、私は入社した意味もないしクビになる」「3年計画にしたので、3年後に計画が未達でも私は知らない」「うまくいかなければ、また転職する」という驚愕のコメントが返ってきたのです。

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しかし、これは莫大な投資を受けた会社にありがちのことだと思っています。投資家は成長に対してお金を出しますが、当然、どこかで見返りを求めます。売上は簡単に伸びていくわけではないので、プロモーションだったり、人材だったりを増やしていく計画を出します。そこでヘッドハンティングの会社に依頼して、他の会社から人材を投入します。その人材は高額な報酬の見返りに、高い目標を持たされます。それが非現実的であっても、やるというしかないのです。そして、そういう人材は3年程度で転職していきます。ただ、その間に会社をひっくり返していくのです。当然、元々その会社にいた人たちは上の方に人が降りてきて、むちゃくちゃ言って、むちゃくちゃやって、そして去って行くので本当に会社を支えていた人もいなくなってしまうのです。

実際に、この例に当てはまる人なのかは別として、JawboneというJawbone UP以外ではそこまでブランド力があるわけでもない小さな会社に、Yahoo! CEOだったり、Microsoftの副社長だったり、Googleのデータアナリストのトップだったりがどんどん入ってくるのです。

成長することイコール世界中で展開して売上を上げていること、となったJawboneは製品自体を改良していくよりも、いかに出荷するかを最優先に考えるようになりました。売上を上げるためには、非常にシンプルな2つの方法があります。既存のチャネルでもっと売るか、新しいチャネルを増やすか、です。

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もう後半は私が知っている人たちはほとんどいなくなり、最近ヘッドハンティングされた人たちばかりになり、製品の話もしなくなり、いかにもっとオーダーするかばかりの話しになってきました。そして、彼らからすると我々のような小さな会社ではなく、大きな会社に任かせた方が多く売れると考えるようになってきました。以前にも書いたとおり、我々は売れば売るほど不良率の高さに悩まされ、できればいったん立ち止まりたいと思っていたので、販売プランを出してくれという時にもできるかぎり押さえていました。

しかし、彼らは全国津々浦々家電量販店からなにから何まで、どんなところでも展開したいという話になり、彼らの方ももう我々に任せられない、我々の方ももう付いていけないという状態になっていったのです。その結果、我々はJawboneから代理店契約を切られるカタチで終わりを迎えました。

幸いにも、新しい代理店の1つは老舗でとても良い会社で、サポートなども含めてしっかりと引き継いでくれましたので、我々としてはできる限りスムースな移管に協力したつもりです。ところが、移管してから問題はより大きくなり、販売店は取扱を中止したり、返品をしてきたりと、大変な苦労を背負ってしまったようです。その後のことは、詳しくは知りませんが、同じようなことをアジア各国で行なってきて、代理店移管した瞬間は新しいオーダーがあるものの、その後にまったく売れない状態だったようです。

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Jawboneはあまりにも背伸びをし過ぎて、お金と引き換えに大切なものを失ってしまったのではないかと思います。私も製品コンセプトやデザインなど本当に大好きでしたし、初期のメンバーと話しているのはとても楽しく、一緒にやっていて自分もその一員だと思って取り組んできました。最後は残念な結果になってしまいましたが、たくさんのことを勉強させてもらいました。残念ながらJawbone UPは壊れてしまいましたが、MINI JAMBOXは現役で使っていますし、Jawbone Eraというヘッドセットもたまに使います。それぞれ素晴らしい製品です。

ここ最近、スマートスピーカーと称していろいろなワイヤレススピーカーが出てきています。JawboneはJAMBOX, MINI JAMBOX, BIG JAMBOXと続いてリリースした後には、ネットワーク接続型の喋って操作できるスピーカーを開発していました。もう4年も前の話です。UPにすべてをかけるということになってからは止まってしまいましたが、先見の明はあったのかなと思っています。

大好きすぎて変な文章になってしまい、推敲もちゃんとせずに書き殴った一連の話にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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[Jawboneとの思い出 バックナンバー]
・Vol.1 出会いから、日本へ導くまで
・Vol.2 ローカライズとビジョン
・Vol.3 驚きの新製品JAMBOX
・Vol.4 驚きを超えた衝撃のUP登場
・Vol.5 終わりの始まり
・Vol.6 終わりの終わり

このブログを書いたスタッフ

プレジデント

ほっしぃ

音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。

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