Appleの流通改革に思う

2010.05.02

投稿者 : ほっしぃ

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数日前のニュースでアップルの量販店戦略について話題になりました。Appleの流通改革というようなまとめサイトなども見ながら、思ったことを書いてみたいと思います。

現在の日本におけるアップルの戦略は基本的にアメリカのAppleによる政策に基づいて実施されていると思います。日本はApple製品に対する支持層も多く、ブランドとしてもかなり確立しており、なおかつApple製品を買うことのできる層が多いため、Appleにとって大きなマーケットではあるのですが近年はその伸び率などの点においては他国に水を空けられているようです。それもあってか、最近の傾向としてはアメリカの戦略を日本でも実施しようとしているように見えます。

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しかしながら、アメリカと日本では大きく異なる点があります。アメリカにおいては200店舗以上のApple Storeが展開されており、人口の集中している主要都市をほぼカバーしています。これにより、Appleのブランドを維持しつつ、しっかりとした製品デモやサポートを提供できる環境にあります。したがって、アメリカにおいては、Apple製品向けに十分なスペースやディスプレイができなかったり、教育されたスタッフを用意できかったりするような店舗ではむしろAppleのブランドを傷つけることになり、取り扱いをしてもらわない方が良いという考え方も理解できます。

私自身、年に数回しかアメリカには行きませんが、その際にコンピューター量販店などを回ってみると、安っぽいスペースに説明員もおらず、他の低価格ブランドのコンピューターと並べて販売されているMacを見ると、ここで売る意味はあるのかどうか疑問に感じることがありました。

たとえばApple製品を買う可能性のある潜在的な購入層がすでに最高潮であるとするのであれば、そのパイをApple直営店や、その他しっかりと販売体制を敷いてくれる特定の販売店に振り分けることは正しい方向性であると思います。

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日本について考えてみると、現状ではアップルストアが7店舗とオンラインストアしかありません。それにApple Premium Resellerが6店舗というのアップルの直接的コントロールが可能な店舗だと思いますが、それでも13店舗に過ぎません。一時期、このAPRを大量に増やしていくという計画もあったようですが、実際にはなかなか計画通りには進んでいないようです。

こう考えると、日本でApple製品を販売する際には家電・コンピューター量販店を外すわけにはいかないのです。ネットが普及しており、ネットで買い物をする人も飛躍的に増えています。しかしながら、やはり店頭での販売というのはネットにない安心感や、直に触れて試せたり、販売店の人に話を聞けたり、ついでに見るということができるので、ネット販売だけですべてカバーするということはできません。

近年のApple製品のブランド力向上によって、買いたい人は買うのだから、と流通改革と称して販売店を選別・縮小していくのは日本においてはあまり良い方向ではないと思います。前述のようなサイトやTwitterなどの論調を見る限りは、Appleの流通改革について肯定的で、量販店側が不当にマージンを取っているような方向性で話されていますが、量販店の集客力、販売力、決済システム、などを借りて販売するわけですから、そこに適正なマージンが発生するのは当然ではないかと思います。これらをすべて自前で用意すると考えた場合の投資額や維持費用を考えれば、Appleがアップルストアの展開をアメリカほどしていない理由がわかると思いますし、それを考えれば流通にかかるマージンは比較としては少ないといえます。

すでにApple製品は他の製品と比べても薄いマージンで販売されているため、もはやApple製品を販売することによっては利益を得ることが難しくなってきており、だからこそ、アクセサリー市場が大きくなっているという「結果」があります。

つまり、量販店にとっては必要経費を補いつつ企業活動として正当な利益を得るためには、アクセサリーを販売せざるを得ず、必然的に売り場が拡張されていったわけです。反対に、ウォークマンなどの売り場を見ると、アクセサリーはSony純正が多く、あまりサードパーティー製のアクセサリーは置いていません。これは日本におけるシェアがかなり縮まっていることを考えると不思議な現象ですが、上記の点を踏まえると合点がいくと思います。

このことは、我々のようなサードパーティーからすると、歓迎すべきことで、知恵を絞って製品を作っても置く場所がなければどうしようもありません。そして、我々が誇るべきことに、逆にアクセサリーがiPodやiPhoneの幅を拡げて、結果として販売台数を伸ばしています(ハズです)。これも含めてAppleの戦略だったとしたら、素晴らしいとしか言いようがありません。

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今回の「流通改革」は特にオンラインストアでの取り扱いについてが話題になっており、オンラインストアの価格統制については確かに難しい点が多く、前述のような店頭でのサービスによって需要を掘り起こしたり、アップルにできないことを補ったりすることもなく、単に価格だけの競争になってしまうことが多いため、オンラインストアの取り扱いをコントロールしたいという意図はよくわかります。

しかし、それとは別にiPadの量販店の取り扱い店舗数(予定)を聞く限りには、この路線で行くとiPadの販売も割と厳しいのではないかと考えざるを得ません。もちろん、初期供給量が少ないので店舗数を絞っているということも考えられますが、今回の「流通改革」でApple製品の取り扱いができなくなってしまった販売店も多くあります。

実のところ、今回の「流通改革」と呼ばれるものはこのような表面的に出てきている部分とは別のところで、大きな変革がなされていますが、まだそこについての話題はあまり出てきていないので私が風呂敷を拡げるのは止めておきたいと思います(世間で話題になったらまた触れたいと思います)。

私はApple製品が大好きで、今も私がiPadを見せた相手のほとんどが「欲しい」と言ってくれるくらいその良さを伝えることも得意です(私が店舗にいたら相当売れると思います)。ただ、最近のAppleの政策には少し違和感があり、せっかくわくわくできる製品が作られていても、そこで損をしてしまっているような気がしてなりません。個人的には、Apple本社の意向通りではなく、日本独自の販売戦略をしっかりと練って実行していっていただきたいと思っています。もっともっと、Apple製品が世の中に増えていくようになって欲しいのです。

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このブログを書いたスタッフ

プレジデント

ほっしぃ

音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。

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