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2018.01.28
NuAnsブランドの製品シリーズの中でも、前回ご紹介した「BANDWIRE」はケーブルを再発明したという意味において、まさにエポックメイキングな製品だといえます。今回ご紹介する「TAGPLATE」はその延長線上にある製品で、これもまたNuAnsのエッセンスがふんだんに散りばめられた傑作のひとつです。
Amazonでも非常に評価が高いTAGPLATEについて、掘り下げていきたいと思います。
iPhone充電用のLightningケーブルが一体化した、薄型の大容量モバイルバッテリーです。iPhoneを約2回のフル充電が可能です。端子部分を収納する仕組みと、タグのようなデザインが一体化することで、iPhoneを重ねて使いやすく、カバンの中では周りのものを傷つけません。
毎回、定番の流れとはなりますが、まずはショートビデオから見ていただくと概要を掴むことができます。写真だけでなく、動きが出ることでどのように使うのかが一目瞭然となります。
まず、この製品の始まりは「BANDWIRE」の時と同じく、iPhoneを充電するのにケーブルが必要以上に長く、絡んでしまうし使い勝手も悪いので、これを是正したいということでした。世の中にはたくさんのケーブルが存在しているけれども、根本的に解決する製品はありませんでした。
「BANDWIRE」のデザインが上がってきたときに、「TAGPLATE」がその延長線上に出てくるのは、もはや必然といっても良いでしょう。「BANDWIRE」はケーブルのみの解決方法で、「TAGPLATE」はバッテリーと一体化した解決方法です。
世の中にはたくさんのモバイルバッテリーが存在しています。大容量かつ安価な製品が多くあるものの、そのほとんどがバッテリーとケーブルは別になっている製品です。バッテリーにUSB端子だけを搭載した方が、安価に作れるからです。しかしながら、実際問題としてはiPhoneを充電するのにはケーブルが必要となり、そのケーブルとバッテリーはまったく別に開発されているために、前述のように「必要以上に長く」「ケーブルが絡まる」問題点がありました。また、バッテリーとケーブルが別になっていることにより、ケーブルは持ってきたのにバッテリーを充電しっぱなしだった、またはその逆でバッテリーのみを持ってきてしまったというような、笑えない話をよく聞きます。
NuAnsの始まりの際に、私がTENTに投げかけたテーマとしてはiPhoneの充電を便利に、美しくするということでした。「TAGPLATE」はまさにその答えだといえます。
バッテリーとケーブルが一体化されていることにより忘れてしまうなどの問題をなくし、iPhoneと一体感を持って充電する事ができるため使い勝手はどんなバッテリーよりも高く、そして必要最小限のケーブル長であるために絶対にケーブルが絡むことがありません。
ケーブル内蔵型のバッテリーも世の中に無いとはいいません。しかし、ここまで便利に美しくケーブルとバッテリーを一体化させたバッテリーは存在していないのではないでしょうか。
NuAnsのコンセプトの通り、「TAGPLATE」も使用していないときには、デジタル臭さ、ガジェット感を醸し出してしまうコネクターを露出しないように設計してあります。これはまさに「BANDWIRE」から受け継いだ構造となります。
「BANDWIRE」と同じように、エラストマー素材(いわゆるゴム素材)の安っぽさ、味気なさを払拭するために、微細なレーザー加工を施しており、ケーブル部分を露出しているにもかかわらず非常に質感の高い仕上がりになっています。この仕上げは「BANDWIRE」の時に説明しているので、そこからそのまま引用します。
この微細な表面テクスチャーはキャンバス生地をイメージしていて、細かな凹凸と生地が織られているような印象を受けることでしょう。これは金型加工としても非常に難しく、我々が通常作っている金型工場では実現できなかったため日本の加工業者に依頼して、このテクスチャーだけは別に仕上げを行なっています。
NuAnsの目指す製品はガジェットではなく、生活の中に馴染むものです。普段、iPhoneと一緒に持ち歩くような雑貨などと一緒に存在していても違和感がないことがとても重要です。そのために、使用していないときにはコネクターを隠し、ケーブルには質感を高めるためのテクスチャーを施し、そしてなんといってもバッテリーの表面に手に馴染む素材を採用しています。
単独、ケーブル一体型問わず、これまでのモバイルバッテリーのほとんどは、金属もしくはプラスチックで安価に大量生産できる素材で形成されていました。iPhoneに充電する、ということだけを目的とするならば、それが一番コストパフォーマンスが良いと言えます。しかし、それが日常的に行なわれ、普通に見る風景になった時、果たしてそのような質感で良いのでしょうか。
特に、大人になり、プラスチックの名刺入れから本革の素材に変えていったり、ナイロンのバッグから本革にアップグレードしていくような過程で、もっと素材感や本物らしさというところに生活雑貨が移り変わっていくのではないでしょうか。そうしたときに、プラスチックや金属のテカテカした質感が、本当にそれらと一緒に使うのにマッチするのでしょうか。
NuAnsブランドでは、その質感、佇まいにこだわっていきたいと思っています。
「TAGPLATE」は初代シリーズではフェルト素材を採用して、誰もが手を伸ばしたくなる、撫でてみたくなる、握ってみたくなるような仕上げにしました。また、第2弾ではNuAns NEOシリーズで採用した本物の木を使用したテナージュ素材と、東レの誇るウルトラスエードを使用してさらにバリエーションを拡げました。
自画自賛になってしまうのをあえて言うならば、こんなに美しく、格好良いモバイルバッテリーは世界に類を見ないと思います。そして、これまで説明してきたとおり、これまでにない便利さや、煩わしさの解消も実現しているため、これ以外には無いと言いきれるほどの仕上がりだと思っています。
実は、「TAGPLATE」の凄さはデザインやコンセプト、素材感だけではありません。iPhoneを充電したいというニーズに対して、その性能としてもしっかりと対応しているのです。初めて「TAGPLATE」を使われる方のほとんどが驚くのが、その「充電スピード」です。
iPhoneに付属する純正の充電器は5V/1Aという基準で作られており、ほとんどのユーザーはこの充電スピードに慣れています。「TAGPLATE」はそれよりも1.5倍速い5V/1.5Aでの高速充電を可能にしています(iPhoneのバッテリー残量によって変化します)。単純に言えば、Apple純正充電器よりも1.5倍速く充電が完了するということです。
もちろん、Appleのアクセサリー認定プログラムである「Made for iPhone」を取得していますので、iPhoneの仕様を超えて無理矢理高速充電しているというわけではなく、安全にかつ高速に充電する事ができるのです。iPhoneのバッテリー残量を増やす(充電する)ということが目的だとしたら、そこに到達するために時間が早い方が良いに決まっていますね。
この記事は「All About NuAnsシリーズ」ですから、さらに非常に細かいところまでご紹介しましょう。
「TAGPLATE」がいかにiPhoneへ充電するかについては長々と書いてきました。「TAGPLATE」への充電については、あまり紹介されていないのではないかと思います。
「TAGPLATE」も普通のモバイルバッテリー同様、内蔵のリチウムバッテリーの容量がなくなってしまえば、「TAGPLATE」自身に充電する事が必要です。そのために、充電用ケーブルを付属させています。ここにもNuAnsのこだわりがあります。
これまで、いくつか製品のデザインが良いなと思って購入したものでも、付属品があまりにも「おまけ」的な位置づけで一切気を使われていないものでがっかりした経験があります。特に今回のような付属ケーブルは往々にしてぞんざいに扱われていて、ビニールの袋にタイラップのようなもので止められて箱の中に転がっていることが多いです。
製品を作るということは、その製品本体だけでなく、付属品やパッケージ、マニュアルまでもがその製品を構成するものだと考えていますので、付属品であろうと「ただ入っていれば良い」という考え方には立っていません。
「TAGPLATE」に付属するケーブルは、さすがに「BANDWIRE」のようにそれ自体で製品として成り立つほどのものではありません。しかし、コネクターはできる限り存在感を消すようなマットな仕上げを施してあり、ケーブルはテカテカのビニール被膜ではなくファブリック調の素材を使用しています。「TAGPLATE」を充電するのに相応しいケーブルだといえます。
さらに、この付属充電ケーブルすらもケーブルの収納を考えて、小さな小さなアイテムを付属させています。特に気の利いた名前は付けておらず、我々はその形状から単に「S字フック」と呼んでいます。これが購入時に付属充電ケーブルを束ねており、その後も使用していないときにケーブルが絡まないように、収納しやすいようなアイテムとして活躍します。
付属ケーブルに付属しているアクセサリーをもTENTがデザインして、NuAnsのロゴが入ったものになります。ロゴが入っているということはオリジナルで金型を製作しているということになりますので、これにコストをかけて作っているということの証明にもなります。普通に安価で大量生産する場合には不必要なコストとして削られるところですが、我々はここにコストをかけてでも使い勝手を良くしたいと考えているのです。
TENTおよび我々トリニティの開発チーム、そして私自身も「使うものを、作る」というのが根底にありますから、自分たちで使いたいものを作っているので、自分たちがこうだったら良いなと思うことはできる限り織り込んでいきたいのです。
「TAGPLATE」は安価なバッテリーと「価格のみ」で比較すれば、もちろん高いといえるでしょう。しかし、これまで書いてきたような付加価値を考えるならば、決して高すぎるということはなく、むしろ手頃なのではないかと思っています。
最後にもうひとつだけ。「TAGPLATE」を紹介するとものすごくよく言われることがあります。「もうひとつ汎用USB端子が付いていたら良いのに」ということです。世の中にはたくさんの充電を必要とするデバイスがあり、iPhone以外も充電したいということはとても良く理解できます。
しかしながら、USB端子を付けるということは、なにかしらケーブルも必要になってきます。この「TAGPLATE」に果たしてそれが必要でしょうか。iPhone以外にモバイル環境ですぐにどうしても充電したいものは、そんなに多くないのではないでしょうか。足し算をしていけば、できることは増えていくのは間違いありません。しかし、それと引き換えに元々のコンセプトから離れ、また美しさともかけ離れてしまいます。ここは、一番大切なことを守りたいと思っています。
「TAGPLATE」が日本ではグッドデザイン賞、海外ではiFデザインアワードやRed Dotデザインアワードなどのデザイン賞を総なめしているというのも、このブレないコンセプトがあるからこそだと考えています。
余談ですが、最近のAppleはLightningコネクターで充電できる製品を増やしてきており、AirPodsなどはTAGPLATEで充電できます。
最後の最後にもうひとつ。
「TAGPLATE」は現在、Lightningコネクターのみの対応となっています。しかし、NuAns NEOを発表したときに、NuAns NEOと一緒に使用できるBANDWIREとTAGPLATEは必要だということで、構想がスタートし、開発もしております。諸事情があり、開発が遅れてしまっているのですが、徐々に仕上がってきていますので、USB Type-C版にもご期待ください。
おまけにもうひとつ。これで本当に最後です。長い文章を読んでいただき、ありがとうございました。
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[All About NuAnsバックナンバー]
・Vol.1 はじめの一歩
・Vol.2 はじまりのはじまり
・Vol.3 TENTとの出会い
・Vol.4 クリエイティブユニットTENT
・Vol.5 TENTとトリニティ、そしてNuAns
・Vol.6 NuAnsというブランド名に込められた想い
・Vol.7 基本のコンセプトは「ニュアンスのある生活」を提供すること
・Vol.8 これまでにないニュアンスを提供するために【素材編】
・Vol.9 新しい回答は、ケーブルとの戦い。
・Vol.10 NuAnsの最初の製品「MAGDOT」は一番シンプルなケーブルホルダー
・Vol.11 デバイスたちの居場所を定義する、「MAGMAT」と「MAGFIT」
・Vol.12 ケーブルを再発明。すべてを再設計したケーブル「BANDWIRE」
・Vol.13 最高の使い勝手と心地よい手触り、インテリアとも馴染むモバイルバッテリー「TAGPLATE」
・Vol.14 これまでにはなかった、まったく新しいスタイルのモバイルバッテリー「ROLLDOCK」
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このブログを書いたスタッフ
プレジデント
ほっしぃ
音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。
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