[製品開発ストーリー Vol.1] はじまりは偶然から

2006.10.05

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今回のように、オリジナルケースを製作して発売するというようなプロジェクトイメージを思い描いたのは実はかなり前のことでした。昨年、iPod nanoが9月に劇的デビューした際に、どのメーカーも事前情報がまったくなかったため、対応アクセサリーの発売は早いところでも11月を過ぎていました。その際に、私が取引をしていたメーカー各社からもまったく情報が来ず、また、どうしてもアメリカのメーカーが多いため、アメリカ国内需要を満たしてから日本に割り当てが回ってくるというように、後手後手になってしまうことがとても多かったのです。

ぼんやりとではありましたが、自分で企画し、プロジェクトをコントロールすることができれば、こんなにも他のメーカーに先を越されることはなかったのではないか、と考えていました。また、さまざまな製品と出会い、いくつかの改良点を思いつきメーカーに報告をしてもまったく反映されなかったり、考え方の違いもあることから、完全に自分が気に入ったものを販売するということはできずにいました。

みなさんもご存じの、この業界最大手の商社も近年になり自社ブランドを立ち上げて、魅力的な製品をたくさん出してきています。勝手な想像ですが、上記に近いような形でオリジナルを作り始めたのではないでしょうか。

しかしながら、当時は会社の一社員であり、思い描いたことをそのまま実現できるような立場でもなかったですし、タイミングもあるので、考えつつもそのまま時は流れていました。

そして、今回のプロジェクトにつながる偶然の出会いがあったのが、今年1月にラスベガスで開催されたConsumer Electronics Show(CES)でした。元々は最新のトレンドを見極めてビジネスに繋げることと、すでに取引をしているメーカーの新製品を見たり、今後のビジネス展開についてミーティングをするために向かったのですが、何とはなく、台湾のOEMメーカーが並んでいるところも今後の勉強のためにと見て回っていました。

そのブースのひとつでiPodケースや周辺機器を製造しているメーカーがありました。もちろん、そのようなメーカーはたくさん出展していたのですが、そこではひとりの女性がものすごい勢いで説明をしていて、そのパワーに魅せられたので少しだけ立ち止まって製品を見ていると、強引にブースの中に連れ込まれて怒濤のごとく商品説明を始めました。その彼女が今回のプロジェクトの立役者となるJudyでした。

まだそれほど長い歴史を持っているわけではない会社ではありましたが、後発なだけに意欲は十分で、前述のように思い描いていたことを一緒に実現できるのではないかと感じ初めていました。

ちょうどCESの直後にMacworldが開催される日程だったため、ラスベガスからサンフランシスコに移動する予定でした。さらにいえば、その前年の1月にMacworldにて発表されたiPod shuffleが1周年を迎え、そろそろモデルチェンジするときなのではないかと囁かれていました。

そこでJudyに、「もし新しいiPod shuffleが発表されて、それに対応するアクセサリーをすぐに発売することができれば、我々にとってビッグチャンスになるよ。」と話しました。彼女はとても乗り気で、もともとはMacworldに行く予定はなかったのですが、急遽トラベルエージェントに連絡を取りサンフランシスコへ行く算段を始めました。こういう行動力は一緒に組むパートナーとして非常に心強いものです。

彼女は「もし新しいiPod shuffleが発表されたら、すぐにAppleブースに行き、型を取りましょう。そのための粘土(のようなもの)を用意しておきます。」とやる気満々でした。それで本当にちゃんとした製品が作れるのか少し疑問ではありましたが、彼女は「3週間で製品を出荷にこぎ着ける」と豪語していました。これまで彼女たちが作ってきた製品は、クォリティとしては決して悪くないものの、どうしても安っぽく見えてしまうものばかりでした。しかし、そこにiPodのテイストをしっかりと組み込めば「化ける」可能性はあると思っていました。価格については十分に競争力のある水準でした。

ラスベガスの夜、長い間、なぜ彼女たちの製品にあまり魅力がないのか、どうしたら良いのかなど、こちらのイメージを伝えました。そして、お互いにベストを尽くして一回プロジェクトをやってみようということになりました。もうこの時点では、彼女と私の信頼関係はある程度築き上げられていたといっても過言ではありません。

インターネットの普及が著しい昨今、メールやチャットだけでのコミュニケーションが盛んですが、顔と顔をつきあわせて、一緒に食事をしたりお酒を飲んでリラックスして、関係ない話も交えつつ、さまざまな意見交換をすることが人間と人間のビジネスには結局必要なのだと感じました。そしてこれは、今回のプロジェクトでも大いに証明されることとなります。

結局、みなさんご存じのように2006年1月のMacworldではIntel CPU搭載のMacBook Proなどの発表はあったものの、iPod本体のモデルチェンジは一切行なわれませんでした。しかし、その後もJudyとはメールのやりとりをしたり、彼女たちが作った新製品の評価をしたり(残念ながら魅力的な製品はありませんでしたが)、やりとりは途絶えていませんでした。

そして9月の上旬、Appleより「It’s Showtime!」のアナウンスにより新しいiPodの出現を確信した我々は具体的なスケジュールについて詰め始めていました。

このブログを書いたスタッフ

プレジデント

ほっしぃ

音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。

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