- 11月
- 2024年12月
少し前に「4月から変わる、接待交際費の上限拡大と100%損金算入(少し難しいけどためになる話)」として、中小企業だけに認められる接待交際費の話を書きました。中小企業経営者にとっては今までは正当に使ったとしても10%否認されるということで少々使いづらい制度だったものが、全額損金算入されるようになって、なおかつ金額も昔は400万円だったものが600万円に拡大されていたのですが、今回は800万円まで拡大しているので「節税対策」に使える枠が拡がったと喜ぶ向きもあるかもしれません。
100%損金算入(つまり税金を支払う金額から差し引くことができる)できる接待交際費というのは節税するのに非常に役に立ちます。しかもこの支出は比較的使いやすいですね。セールスにも繋がる可能性はありますし、交際費にあたる支出というのは自由に振り分けやすいからです。
政府もこれをもって、中小企業が交際費、つまりは飲食などに散在してもらうことでお金を回そうという期待が多く込められた制度改正だといえます。景気を何とか良くしていこう、そのためには多くの人がお金を使ってもらわなければいけない、そのために規制緩和していこうという流れは悪くないと思いますが、経営者の立場に立って考えた時には喜んではいられません。
このトリログの人気エントリーのひとつである「なぜ高級車を買うのか」でも取り上げましたが、節税になるからといって、納税額を減らすことを目的とした支出というのは、会社の経営を安定させよう、会社にとって良いことをしようということとは反対に働く可能性があるのです。
・そもそも接待など必要なのか
そもそも接待をしてモノを買ってもらうような時代でしょうか。もちろん、さまざまな業種があってビジネスのカタチは様々ですから一概にはいえいませんが、少なくとも特に私たちがビジネスをしている業界においては接待でモノが売れるということはほとんどないのではないかと考えています。
デジタルガジェットの世界は同じモノを長く売り続けることが非常に難しく、店頭でも流行り廃りがめまぐるしく入れ替わり、売り場は常に改装が行なわれて数ヶ月単位で拡大縮小を繰り返し、バイヤーも日々新しいモノを求め続けています。エンドユーザーもネットで溢れかえっている情報の中で、接待にまみれて大人の論理で展開された商品をあえて選ぶ必要はありません。その商品自体の魅力がすべてで、あとはそれをどう見せていくかに尽力すべきであって、バイヤーを接待して取り扱いを決めたとしても結果として商品に魅力が無ければ販売不振になり、結果として不良在庫に苦しむという結果が見えています。そもそも商品が良ければ接待をしなくても求められますし、条件などが悪くても販売してもらえます。
一例として生のデータをお見せすると、当社の昨期決算における接待交際費の額を再確認してみると839,261円です。これを多いと見るか少ないとみるかは定かではありませんが、前述のようにこれまで上限が600万円だったことから考えれば相当少ないといえるのではないでしょうか。
接待といっても、高級なクラブに行くということが接待ではなくて、現状は社外の人を含んでかつ1人あたり5,000円を越える飲食を伴う支出を交際費と指定していますので、ちょっと居酒屋に行った場合でもそれくらいにはなります。むしろ、私が知る限りクラブのようなところでの接待はありません。前述のように接待したから売れるとは思っていないということはあるのですが、それでも関係各所の人たちと商談の場だけではないコミュニケーションが必要な場合もあります。忘年会などのようなものもここに含まれます。
ということで、当社の売上規模はおおよそ16億円(海外売上含む)ですから、それでこれくらいの交際費というのは多くないといえますし、過剰な交際費は必要ないと考えてます。枠を拡大していただいても、必要ではない経費をあえて使う必要が無いので当社としては何かこれによって変わることはありません。これまで10%は差し引かれてしまったのが、全額損金算入できるようになるのは喜ばしいことですが、必要であれば使いますし、必要でなければ使わないというだけです。
・税額は下がったとしてもキャッシュフローは悪くなる
前述のように政府はたくさんお金を使って欲しい、中小企業経営者もほとんどの税理士に「交際費が全額経費になるようになりましたよ、しかも800万円まで拡大されました。」と言われて派手に使って「節税」しようと考える人が多いようです。
しかし、そもそも必要ではないことにお金を使う必要は無いと思います。
そして、もっと重要なことは「この交際費を使った節税は、支払う税金は下がるかもしれないけれども、残るお金も減る」ということです。この考え方をしっかりもっておかないと、全体を見誤りますので、すべての経営者の方には心に刻んでおいて欲しいです。会社の血液はキャッシュ、つまりお金です。これがなければ動くことができません。すべてはお金があってこそ、の企業活動です。
簡単に説明しますと、これまで1000万円利益があった企業が、交際費を使って800万円の上限いっぱいまで経費を増やしたとします。使う前は、40%の税額と仮定すると400万円を税金として支払うはずでしたが、800万円は経費として認められますから、税金を支払う対象は200万円になり、ここに40%の税額となりますから80万円を税金として支払うことになります。
一見、ものすごく節税しているように見えます。実際、納税額が減っているので節税にはなっていますので税理士も大喜びです(それにしてもなぜ税理士は節税をあんなに進めてくるんでしょうね)。しかし、これが本当に必要な支出の結果であればもちろん問題ないのですが、これを節税対策のためだけに実施したとすれば、経営者としては失格であるといわざるを得ません。私には認定する権利はありませんが、私だったらやりませんし、その経営者は無能だなと心の中で思います。
ちょっと出し方がずるいですが、こちらの表を見てください。さきほどの表には続きがあって、最後の行が一番大事なところなのです。つまり手持ちのキャッシュです。節税したはずの右列は手元に残るキャッシュがたったの120万円です。節税しなかった方は税金の支払いは多いのですが、結果として残っているキャッシュは600万円です。
節税することが目的なのではなくて、会社を健全に経営することが目的だと考えればどちらが賢い選択なのかは自ずと分かってくると思います。なので、政府の期待を裏切るようで申し訳ないですが、当社はそれには乗りませんし、全国の中小企業経営者にも政府と税理士に騙されないようにして欲しいと思っています。
そもそも、税理士と中小企業経営者は税金を目の敵にしすぎな気がしています。ここについてもちょっと思うところがあるので別エントリーで書いてみたいと思います。
P.S.
冒頭の写真は甘いもの(チョコレート)に騙されないようにというイメージです(苦しい
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このブログを書いたスタッフ
プレジデント
ほっしぃ
音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。
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