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中小企業の製造業が中国から東南アジアに生産移転できない理由

2019.05.26

米中関税戦争ともいうべき争いは、このままだと中国に追い抜かれて世界を乗っ取られるのではないかと疑心暗鬼になっているアメリカの不安からくる強権的な圧力と、本当は経済も不安要素が出てきてできる限り早く和解したいしそのためにはある程度譲歩しても良いと思っていた中国がメンツを潰されてしまって、どうにもこうにも引けなくなってしまったところで、長期化が予想されています。

米企業75%「追加関税で悪影響」 4割が工場移転検討:日本経済新聞

その中で、いくつかの大手製造業が中国から特に東南アジアへの生産拠点の移転を計画しているとの報道が出てきています。現時点においては、中国で製造してアメリカに販売する場合、もしくはアメリカから調達した部品などを25%以上使用した製品の輸出に対してかけられるもので、たとえば我々のように中国で生産しているものの、日本で販売しているので輸出先が日本しかない場合には、大きな影響はないともいえます。

米国原産品または米国原産品を含む製品を日本から再輸出する際のEARの規制および再輸出許可申請方法 | 貿易・投資相談Q&A – 国・地域別に見る – ジェトロ

しかしながら、特に中国における世界でも特殊な環境(政治的な話をするつもりはありません)から考えると、中国で生産し続けることのリスクも考えておく必要があります。また、中国という国全体が発展していく中で、人件費の高騰や資材部品などの価格上昇なども、我々のような会社で考えると「外部環境」としての「脅威」(SWOT分析で言う「T=Threat」)となりますので対策を考えておかないと、何かリスクが顕在化したときに「景気が悪い(だから仕方ない)」などと言っても意味のない言い訳が出てきてしまいます。

・中国から生産拠点を移すことは可能か

製造現場の本国回帰の流れから見る中国生産の問題点 | トリニティ

我々は中国から他の国に生産拠点を移すことを考えた時に、いろいろとデメリットが想定されます。過去に上記のような記事を書いたことがありましたが、実際問題としてはまだ乗り越えられない壁があると考えています。

  • サプライチェーンの問題
  • 物流の問題
  • トータルコストの問題

細かく書き出せばもっとたくさんあると思いますが、今回は大きな3つについて書いておきたいと思います。

サプライチェーンの問題

サプライチェーンとは、製品を作り上げていく上で、大元の原材料や部品、調達から製造、配達などの流れ全体のことを言います。一般的なサプライチェーンと異なり、ここでの顧客は消費者ではなく、我々となります。たとえば、1つの製品を作り上げて出荷して店舗で販売される形にするまでには、多くのサプライヤーと呼ばれる業者が密接に絡んでいます。

たとえば当社のiPhone用ケースひとつを例にとっても、製品本体、乾燥剤、スペーサー(スポンジのようなもの)、マニュアル、付属品、製品を載せるトレイ、パッケージ、フック、ステッカーなどなど多くの部品で構成されています。これらを安価かつ複数ルートで調達できるのが中国の良いところです。

もしもベトナムなどで生産するとしたら、このサプライチェーンが貧弱なため、1つのチェーンは構築できたとしても、もしもそのひとつが何かの理由で納品できなくなったり遅延したり、はたまた倒産したなどで分断されてしまったとしたら、たとえ他のすべての要素が用意できていたとしても製品として出荷できない状態になるわけです。

そのため、大手製造業のように、その製品だけを作れば成り立つというところは移転しても問題ないと思いますが、我々のように完成品を作るということになると、なかなかこのサプライチェーン問題が解決していかないのです。

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以前に、では日本で作ったら良いということで、技術力も活かしつつ、純日本製のシリーズを開発・販売しましたが、この時も製品自体というよりもパッケージや副資材の調達に苦労しました。調達の関係で、この製品にはケースを収納するブリスターと呼ばれるトレイは使用できずに、型紙を折りたたんで固定するという方法を採りました。

現時点では付加価値を訴求するという意味でこのようなモデルがあっても良いと思いますが、すべての製品について同様にすることは、レッドオーシャンと呼ばれるスマートフォンアクセサリーでは厳しいと言わざるを得ません。

物流の問題

サプライチェーンに少し似たようなところがありますが、物流についても乗り越えにくい壁があります。

当社の製品は広東省深圳や東莞といった香港に近い、ここ数年で非常に大きな発展を遂げた地域で生産をしています。元々香港と隣接しているので海外に向けた物流網が強く、日本に出荷するというルートについても、船も飛行機も選択肢が山ほどあり、頻度としても毎日何かしらの方法で出荷できる環境にあります。

しかし、まだ東南アジアの国々でここまで物流網が発達している国はないと思います(あったら教えてください)。そして、日本から離れれば離れるほど運賃も高くなり、納期も長くなります。その意味では、香港や韓国は日本に近く、なおかつ物流網が発達しているので選択肢としてはあり得るのですが、元々のコストも考えるといまさら発展した国に移転するということはないでしょう。それであれば、日本で製造した方が運賃も安く、関税もかからないので良いと思います。

トータルコストの問題

物流の問題はコストの問題にもなってきます。単純に運賃という意味でのコストもありますが、サプライチェーンが細いと相見積もりなどができなくなり競争の原理が働かず、結果としてコスト高になりがちです。また、私を含む当社の開発メンバーが渡航する際にも選択肢が少ないとコストが高くなります。

時代はどんどんと変わっていっているとはいえ、これらの問題点はまだ解消できているとは言い難く、現時点であれば我々が日本市場がメインターゲットだということからしても、どこかといえば日本に移転した方がメリットが大きいと思います。実際、いくつかの製品は日本製造をしていたり、これからもそういう製品が出てくる予定です。

また、一部製品だけを移転するというのは非常に効率が悪いため、移転すると決めたならばすべてを移転する必要があります。そのためにはこれらの問題点が解決されつつ、中長期的に継続すると確信できないといけません。

我々のような零細かつファブレス企業(自社では工場を所有せず、生産委託している会社)の場合は、そう簡単に移転できないという話でした。米中貿易戦争が日本にも火の粉が降りかかってこないことを祈るしかありません。現時点では、前述の外部環境としての脅威への対策は、徐々に日本へ移管していくしかないと思っています。

このブログを書いたスタッフ

プレジデント

ほっしぃ

音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「 Simplism 」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は24時間365日のウェアラブルデバイス「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。

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