先だって「[NuAns NEO]世界へ向けて、クラウドファンディングを開始」という記事を書いて告知しつつ、NuAns NEOを日本だけでなく海外に展開しようと目論んだクラウドファンディングですが、あえなく失敗に終わりました。NuAns NEOを発表後、国内外問わずにいろいろなメディアに掲載していただき、CESやMWCといった海外の展示会でも出展したこともあり、海外からの問合せが多くあったために、それでは海外で販売するためのコストをクラウドファンディングで獲得という企画でした。

結果としては残念でしたが、実際に手に取ってみたわけでもない製品に対して489人の方が「バックアップ」をしてくれ、合計で142,368ドル（1ドル100円換算で14,233,680円）を集めることができました。数あるクラウドファンディングサイトの中でもKickstarterは老舗であり、目標金額に達成しないと1ドルたりとも手に入れることができないのが特徴です。多くの方から、725,000ドル（1ドル100円換算で72,500,000円）に設定した目標金額高すぎるというご指摘をいただきました。しかしながら、この金額が当社にまったく利益がなく、むしろこれだけでは少しコストを賄いきれない金額であるため、私としては正しい目標金額だったと考えています。
NuAns NEOをアメリカで販売するとなった場合に必要なコストとしては、アメリカのネットワークで使用できるような対応周波数設計と規格・認証試験があり、さらには当社が開発・製造を委託している会社に製品を製造してもらう必要がありそこには最低発注数量というものが存在します。これらを足すと、前述のような目標金額になるわけです。幸い、日本で販売している製品でもあるのでこれだけで済みますが、一般的にクラウドファンディングに出品されている製品はそれ以外にも試作や開発、金型費用などのコストも考えなければいけません。

さらにいうと、以前に「お金だけでは製品はできないのですよ。」という記事を書いたとおり、たとえお金を調達できたとしても製品が必ず出来上るわけではないということは最近もいろいろと話題になっています。

最近、よく見るクラウドファンディングでは、どう考えてもその目標金額では製品を作れないでしょう、というものが多く出回っており、それはクラウドファンディングをマーケティングツールとして活かそうという事なのだと思います。まずある程度注目を浴びることができ、なおかつ低い金額で達成することで、達成したと喧伝することができます。この場合、ほとんどの場合はすでに別途投資を受けているか、販売チャネルが確立されているか特定の販売先が決まっている、もしくは赤字でも始めたい（始められる余裕がある）ということだと思います。

しかし、そもそもクラウドファンディングとはなにであったかと考えると、サービスのアイディアやモノ作りのノウハウがあるものの銀行や投資家から資金を得られない場合に一般の人たち（クラウド＝群衆）に出資をしてもらう（ファンディング）、というものだったと思います。私たちが実際にハードルを下げて1,000万円程度で達成するように設定したとして、実際にそれがゴールを超えたとして、それでも結局のところはそれでは私たちはやっていけません。そうするとなんのためのクラウドファンディングなのかということになります。

今回、私たちのNuAns NEOが目標に達するほどの魅力を提供できなかったことは、完全に私たちの責任です。もっと求められるものであり、それをもっと周知徹底していく必要があったのだと思います。ただ、だからといって目標設定を低くすれば良かったとは思っていません。次に出すことがあれば、これらの失敗を克服していく「もの」と「こと」を起こしていこうと思います。