- 11月
- 2024年12月
前回、Jawbone製品との出会い、無謀とも言えるアタックが結果として日本展開をする際に、日本代理店を任せてもらえる結果になったという話をしました。
そして、晴れて日本でのデビューを果たしました。ここまでも結構紆余曲折がありました。まずは前回良いところとして一貫したブランディングという話を書いたと思います。しかし、それが言語の壁を乗り越えていくのは非常に難しく、ローカライズという作業が発生してきます。Jawboneは当初、英語のままでいこうということだったのですが、さすがに一般的に普及しているものでもなく、なおかつ特長を伝えなければ、すでに当時も安いハンズフリーヘッドセットはすでに存在していましたので、差別化ができません。
結局、一部は日本語にしてもらう事を承認してもらったものの、いわゆる直訳しか認めてくれません。しかも、どこでどのように依頼したのか分かりませんが、我々日本に住む人間からすると「怪しい」と思える日本語を入れてくるのです。我々に任せてくれれば、ちゃんと直訳でなくても伝わる日本語を考え出して、パッケージなどの小さなスペースにも合うようにしていく、これが我々の役割のひとつでもあると思っていますが、これもなかなか許してくれません。
私は「ローカライゼーションとトランスレーションの違い」ということをよく話します。我々は単に翻訳(トランスレーション)するわけではなく、日本のマーケットに合うように現地化(ローカライゼーション)していくようにしていきたいと思っています。翻訳だけだと英語力だけで実施することができますが、現地化となると、製品自体を誰よりもよく知っていて、新規性、その良さ、市場での強みなどを鑑みて、適切な言葉を割り当てていくということが重要になります。
その時点で、私自身が日本において世界で一番Jawboneのことを知り、Jawboneのことを愛し、Jawboneを使っている人間だという自負がありましたので、絶対に良いローカライゼーションができるという自信がありましたので、長い長い長い間説得を続けていきました。
ICONがデビューした時には実は、パッケージは英語のままでそこにステッカーを貼ることで展開をしていました。なので、まだまだ伝えたいことが全然伝わりません。そのため、販売のほとんどはオンラインが多かったのです。ブランドの知名度もありませんし、どこにアドバンテージがあるのか分かりませんから仕方ありません。
その後、Jawboneが成長してくるにあたり、外部からエグゼクティブが招聘されてきました。その人が日系の人で(日本語は喋れません)、日本にも理解があったり、当社に来て我々といろいろ話す上で、当社にある程度任かせても良いだろうということを社内で説得してくれたため、その後は非常にやりやすくなりました。彼はJawboneを去った後も、いろいろな話を持ってきてくれたりして、アメリカのスタートアップで日本にも展開したいという時にはまっさきに紹介してくれます。
さて、今回も長くなりそうなので、ひとつJawboneの良いところを紹介したいと思います。
デザインというところから入り、機能として特別なものを持っている、というところから入ったJawboneですが、もうひとつその当時としてはまだ珍しいことがありました。
Jawboneは最初の製品も、我々が取扱いする時にも、ハンズフリーヘッドセットが唯一の製品でした。それなのに、ソフトウェアエンジニアがたくさん在籍していたのです。Jawboneのヘッドセットは「My Talk」というソフトウェアがひとつのウリになっていました。自分でヘッドセットのボタンの機能をソフトウェアでカスタマイズしたり、当時としては珍しく音声での案内をしてくれる仕組みがありました。それもいろいろな声のパターンがあってヒーローっぽいのとか、インテリな声とか、いろいろ選べるという楽しさも兼ね備えていました。
ある時に製品戦略のトップと話していたら、彼らとしてはJawboneはハードウェアだけを作る会社ではなく、これからはソフトウェア、インターネットがキーになるという話をしていました。ハンズフリーヘッドセット以降に出てくる製品もすべて、ソフトウェアでカスタマイズできたり、機能を簡単にアップデートして、ハードウェアなのに一度買ったら終わりではなく、改良し続けるようにできるのが理想だということを話していたので、これは未来だなと感じましたし、今となってはこの手の製品はほとんどがアプリを提供していてカスタマイズやアップデートができるようになっていますので、このビジョンとしては正しかったのだと思います。
また、ここ最近AIスピーカーと呼ばれるスピーカー型のインターフェースが雨後の筍のようにニョキニョキと生えてきています。ほぼ同タイミングなのは何か裏があるのかもしれません。当然、スピーカーというだけでなく、マイクがあり、入出力のインターフェースを備えています。
Jawboneは、2010年当時から今後音声によるコントロールが増えてくると予測していて、その入口と出口を担うのがハンズフリーヘッドセットだという位置づけで、単に車に乗っている時に便利というだけではなく、長期のビジョンを持って製品の開発をしていたのです。
その当時は、私は音声の場合には言語の壁ができてしまうので全世界的にはなかなか拡がらないのではないかというところや、人がいるところではできないので、なかなか難しいのかなと思っていました。しかし、恥ずかしささえ乗り越えれば、AIスピーカーは周りの人にレスポンスが聞かれてしまいますし、持ち運べるタイプではないので家やオフィスなどに縛られますが、ハンズフリーヘッドセットは特にJawboneのようにパチンコ屋で話してもしっかりと音声が伝わる骨伝導を利用したノイズキャンセルを搭載している製品では、有効なのではないかと思います。
今回も長くなってしまいましたが、Jawboneのデザイン、ハードウェアとしての機能、さらに長期ビジョンにおけるソフトウェア戦略も素晴らしかったといえます。一方で、ブランディングについてはこの後も揉める原因になります。
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[Jawboneとの思い出 バックナンバー]
・Vol.1 出会いから、日本へ導くまで
・Vol.2 ローカライズとビジョン
・Vol.3 驚きの新製品JAMBOX
・Vol.4 驚きを超えた衝撃のUP登場
・Vol.5 終わりの始まり
・Vol.6 終わりの終わり
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このブログを書いたスタッフ
プレジデント
ほっしぃ
音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。
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