失敗談:金融デリバティブの損失

2013.04.27

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トリログではManagementというカテゴリーを作ってちょっぴり偉そうに経営関係の話を書いています。右も左も分からずに会社を運営し始めて、それでももうすぐ8年目に入るので、ある程度の経験は積んできたかなというところで、みなさんに多少なりとも役に立つような情報があればと思って書いてきています。今回はこれまでの会社経営の中でも一番の失敗ともいえる事例をご紹介しましょう。
みなさんは為替デリバティブという言葉をご存じでしょうか。Google先生に尋ねればたくさんの答えが返ってきますので見ていただけると良いと思いますが、トップに出てくるこちらのサイトはかなり詳しく解説しています。

簡単にいえば、為替リスクを回避するためにある程度の期間である一定の金額で外貨を買い続けること、というとわかるでしょうか。なかなかこの一文だけでは想像がつかないと思うので、実際の例に当てはめてご説明しましょう。

当社の例でいうと、当時2007年は平均為替レートがおおよそ1ドル=115円程度でしたが、ちょうどこの為替デリバティブの話を持ちかけられた時には120円に達しており、為替市場はその後も円安方向に続いていくと言われていました。その時の話としては、今後5年間、毎月3万ドル(当時レートで約360万円)を買い続ける契約をしてくれれば、1ドル=110円で買うことができる、というものでした。

円安については以前にも書いたことがありますが、当社のような海外から製品を輸入してドルで支払いをしている会社にとっては非常にありがたくない状況です。為替レートがどう変わろうとも、実際の製品が変わらない場合にはなかなか製品自体の価格を上げることが難しいので、現実的にはどんどんと利益を失っていく方向になりますから、少しでも為替レートを良くできる為替デリバティブのオファーというのはとても魅力的に見えました。

この5年というのは、この期間が短ければ為替レートがもう少し悪くなるわけで、1ドル=120円の時に1ドル=110円になるというのは相当なメリットであり5年間続けても良いと思いました。また、この時の毎月の支払額がおおよそ10万ドルであったためにリスクヘッジとしてはしつつも、デメリットを考えて30%以下に抑えるというある程度固いものではあったと思います。

そして契約をしたのが5月。現実にはその後少しの間は円安に振れていったものの、その後一気に円高に振れていき、あっという間に110円を越えて円高になり、ご存じの通りずっと円高が続いたのです。この110円よりも円安だったのはおそらく数ヶ月しかなかったのだと思います。つまりは、ここからずっと5年間、市場はそれよりも円高だったのにもかかわらず110円で買い続けたわけです。

ここで強調しておきたいのは、そのオファーを持ってきた金融機関(文脈上まったく問題ないとは思いますが念のためここでは金融機関名は書きませんが)はしっかりとメリットとデメリットを説明した上でのオファーでしたので、世の中で言われているような不適切な勧誘ではありませんでした。市場の状況などを見ながら、120円で買うものを110円で買えるというメリットに目がくらんで契約を進めたのは私自身の決断の失敗であり、金融機関の責任ではありません。為替などはどんなエコノミストでも確実に言い当てられる人はいませんから、これはもう博打に近いと考えても良いのでしょう。それは経営者の責任の範疇と考えて良いと思いますし、説明不足と主張する人もいるかもしれませんが、世の中美味しいことしかない話などないということがわからないのは経営者の怠慢ではないかと思います。

この流れは当時流行ったこの仕組み全体に影響があり、総支払金額に対して為替デリバティブの割合が高かったところは倒産してしまうほどの打撃を受けたようですが、当社の場合にはなんとかそれを乗り越えて、昨年ようやく契約満了になりました。自社で価格を設定できる場合には為替レートが悪くなった場合でも多少の調整が利きますが、下請けなどで自由に仕入れ素材や価格を設定できない場合でなおかつ利益率が低い会社では赤字に陥る可能性が高いといえます。

これが、私が今までの経営の中で一番の失敗だったと思える出来事です。財務諸表の中の損益計算書にある為替差損項目を見るのがいつも苦痛でした。ちょうど、最近急激な円安が続いて100円を突破してくるような自体になってきたので、このことを思い出しました。しかし、この為替デリバティブは何かしら条件が改善されていない限りもう手を出すことはないでしょう。

このブログを書いたスタッフ

プレジデント

ほっしぃ

音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。

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