米中関税戦争と日本における零細企業の現実

2019.05.12

難しいタイトルのように見えますが、そんなに深い考察でもなく、単に感想を書き連ねているだけですのでご安心ください(何を?)。

私自身は中国で生産して日本に輸入・販売するというビジネスをしてきて、現状の米中関税戦争が我々のような日本のビジネスにどのような影響を与えるのかというのを考えてみました。

・米中間の関税戦争は日本にとって有利か

アメリカから中国、中国からアメリカへモノが移動する際にかかる関税が高くなることで、日本への輸入ビジネスにどのように影響するでしょうか。中国からアメリカへかける関税については、直接的にはほぼ影響がないと思います。

アメリカから中国への関税が上がることによって考えられるのは、アメリカ製部品が高くなるため、その分が上乗せされて我々の仕入れ価格に影響することです。ただ、現時点においてはアメリカ製の素材やパーツをどれくらい使っているかというと、すぐに思いつくものがないほどです。

もしかすると、スマートフォンやイヤフォン、IoT製品に含まれているQualcomm社製チップなどアメリカ企業の半導体が相当するかもしれませんが、現時点では我々のビジネスはアメリカ製で関税がかかるような素材や部品を使用していないので影響しません。また、製造国がアメリカになっていて関税がかかるものなのかも分かりません。

ここから考えると、仕入価格面では特に影響がないと考えています。昨年から始まった関税戦争によって、当社の仕入価格に影響した事例がないことからも、この考え方で正しいと思います。

ひとつだけ大きくあるのは、中国企業にとってアメリカ市場は巨大なマーケットであったということです。アメリカ企業は中国でしか生産できないもの以外は、長期的な関税増加を嫌って徐々にベトナムや東南アジアに委託工場を移転させていくことでしょう。現実には中国における人件費や原材料費高騰が背景にあり、どこかのタイミングで発生することだったのかもしれません。展示会などでは中国以外でも生産できますとアピールしている会社もありましたが、そんなに簡単に中国企業は簡単に中国国内を出て行くことができません。相当な投資が必要なことや、サプライチェーンが育っていないこと、物流も中国と比べるとかなり貧弱なので、東南アジアに工場を作るといっても並大抵のことではないでしょう。

そうすると、必然とアメリカ以外の国とのビジネスを増やしていかなければ生きていくことができません。その考え方でいくと、相対的に日本の会社とのビジネスを増やしていく方向で中国企業が戦略を変えてくることはあり得ると思います。一般的なイメージとしては、アメリカ企業の注文は1回の量が多く、価格にはシビアながらも、そこまで神経質になるほど品質を求めてこないというのがあって、逆に日本企業は小ロット多品種で品質を高く求めてくるので、どちらかというとアメリカ企業を優先に考えていたところがあると思います。

これからは生き残っていくために中国企業の考え方がシフトしていく可能性はあると思います。

・追加関税で為替が変動し、円高方向へ

アメリカ経済がさまざまな理由で好景気を持続しているということもあって、本来はドル安に振れそうな関税戦争の最中でも、1ドル=110〜111円程度を揺れ動いていた為替市場ですが、先日のトランプ大統領による追加関税引き上げの宣言以降、急激に円高に振れていくことになりました。直近ではおおよそ1ドル=109円前後を揺れ動いています。

中国から日本への輸入ビジネスとしては、ほとんどの企業がアメリカドルで決済しているので、円高ドル安になっていくことは、仕入に対する支払が少なくなるということで大きなメリットになることは間違いありません。ただし、中国企業が実際に収入を仕入だったり人件費だったりに振り返るときには人民元になるため、ドルから人民元への変換レートも重要になってくるのは言うまでもありません。アメリカはあまり好んでなかったり、為替操作だということを指摘してきていますが、実際には相対的な通貨の強さでいうと人民元は高くなっていく方向になるので、中国企業にとっては悪くない傾向にあります。

​為替については、我々のような企業に とっては円高ドル安であり、なおかつ人民元高ドル安だというのが一番望ましいということです。最近の米中関税戦争はその方向に向かっているように見えます。

パッと思いつくところでは、この2つが大きなポイントになるかと思います。それにしても、高関税をかけて脅しておきながら譲歩を引き出す方法は、現時点ではアメリカが中国に投げかけていますが、それが一段落付いて、特に中国の大幅な譲歩を引き出した結果となった場合には、日本にも襲いかかってくる脅威であることは間違いありません。

前述の通り、ミクロで考えれば我々のような企業がその脅威で何か不具合が発生することは少ないと言えますが、回り回って日本経済が悪化していけば、国内での販売が落ち込んでくることがあり得ますので、少し長い目で見ればマイナスになっていきますので推移を心配しています(私が心配してどうこうなることではありませんが)。

このブログを書いたスタッフ

プレジデント

ほっしぃ

音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。

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