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前回の「なぜ高級車を買うのか(前編)」に引き続いての後編です。
・減価償却と耐用年数の仕組み
前編の時に減価償却と耐用年数の説明をしました。耐用年数とは、これくらいの期間使えるだろうという想定を法律で定めているものですが、実はすべて新品を前提として設定されています。中古の場合には、すでに使用されていますからその分耐用年数が減っていると考えて良いわけです。ただし、1年経過したからそのまま耐用年数から1年を引けるわけではありません。
耐用年数ー経過年数×80%
簡単に計算式を書くと、上記の通りとなります。今回のように車の耐用年数を当てはめてみると、下記の通りになります。(なお、小数点以下は切り捨て)
新車:6年
1年経過した中古車:6ー(1×0.8)=5.2=5年
2年経過した中古車:6ー(2×0.8)=4.4=4年
3年経過した中古車:6ー(3×0.8)=3.6=3年
4年経過した中古車:6ー(4×0.8)=2.8=2年
5年経過した中古車:6ー(5×0.8)=2.0=2年
耐用年数である6年を経過した場合には、耐用年数×20%という計算式が適用されるため「1.2年」になるのですが、2年未満の場合には2年とすると定められています。
これを見て分かるとおり、4年以上経過しても耐用年数は変わりません。つまり、「4年を経過した中古車が一番新しくなおかつ減価償却を最短で行なうことができる」ということになります。ここから「4年落ちの中古車」というキーワードが導き出されます。
・新定率法の衝撃
まだあまり書籍などでは紹介されていない場合が多いのですが、平成19年度税制改正(2007年)により減価償却制度が大きく変わり、新定率法という基準に当てはめると、なんと耐用年数が2年の資産については1年で償却をして良いということになりました。つまり、今回の例でいえば、4年を経過した中古車を購入した場合に1年ですべて費用計上することができるわけで、元々の目論見にかなり近づくことができるわけです。
ただし、使用し始めた時から12ヶ月分ということになりますから、期末に使い始めては翌期に持ち越してしまいます。したがって、期初に4年落ちの中古車を購入するのが正しい制度の使い方となります。ここで「期初に購入」というキーワードが導き出されます。
・なぜアウディなのかと含み資産
前述のように、4年落ちの中古車を期初に買えば、すべて費用として計上することができるのがよく分かりました。これで1,000万円の車を買ってもその分費用計上できるので「税引前利益」が減り、法人税をこの分ほぼ100%支払わなくて良くなります。
では、なぜアウディを購入したのか。これにも訳があるのです。
中小企業を経営するということは非常に困難です。資本力もあまりない状態ですし、ビジネスも安定しているわけではありません。いざという時に銀行からお金を借りられないということもあるでしょう。いわゆる資金繰りに窮するときに救世主となるのが、この車なのです。
さきほどの説明の通り、ルール通りに購入をすれば1年の間に費用計上して減価償却が終わります。そうなりますと、帳簿上は1円の資産という形で計上しますが、実際に4年落ちの高級車が5年になって価値がゼロになることはないわけです。先ほどの例でいえば、4年落ちでなおかつ1,000万円の中古車ということは元の価格は2,000万円程度であると推測されますから、5年落ちになっても500万円は下らないと考えて良いと思います。
そうしますと、帳簿上は1円であるにもかかわらず、500万円以上の含み資産を持っていることになり、いざという時に売却をして500万円の現金を得ることができるのです(最終的にこの500万円には雑収入としての税金がかかってしまいますが、それは決算後の話です)。
今回そこまで高価ではなく、Audi A4 Avant quattroは約300万円くらいで購入したのですが、アウディはBMWやベンツと違い流通量が圧倒的に少ないために中古価格が安定しているというのが、アウディを選んだ理由のひとつです。もちろん、デザインなどの要素も多いのですが、経営的には売却時の価格が安定的に高いアウディが一番良いのです。
というわけで、「アウディ」にする理由と、「含み資産」というキーワードもご説明しました。
こういう深い思慮に基づいてアウディを購入しているわけですから、「儲かってウハウハだから買ったんでしょう」という言い方は止めてください。今回の前編・後編のエントリーは最終的にこの1行を書きたかったがためのものです(笑)。お後がよろしいようで。
追記:もうひとつ付け加えるならば、金利があまり高くないのであれば12ヶ月のローンを組んで買うと、毎月の費用計上と現金の流出がほぼ一致するので、キャッシュフロー経営の観点から望ましいと言えます。今回私はそこまではしませんでしたが、1年といえども先に多額のキャッシュが流出することを避けるのは経営の基本ですね。
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このブログを書いたスタッフ
プレジデント
ほっしぃ
音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。
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コメント
2013.12.08 20:38 #1071 Taro Abe
#1071への返信
2013.12.08 20:38 #1071 Taro Abe
非常に興味深く読ませていただきました!
https://kuru-ma.com/page317.html#2001_2500
によると、維持費がかなりかかるようですが、どのようにクリアされているのでしょうか。
ぜひご意見お聞かせください。
2013.12.09 00:08 #1072 ほっしぃ
#1072への返信
2013.12.09 00:08 #1072 ほっしぃ
Taro Abeさん、書き込みありがとうございます。
維持費についてはそのまま損金計上できるものですし、使用するのに必要な支出はするしかないですね。それとも、高級車だと維持費も相対的に高くなるというご指摘でしょうか。今回の論点としてはその年(もしくは短期)に損金計上ができることと資産として残るというのが主眼ですので、相対的に維持費がかかるのを節約したいというのが一番大切な場合には、逆に一括償却できる税抜き30万円以下の中古軽自動車あたりが狙い目だと思います。
2016.01.26 12:31 #1073 NPOYUI
#1073への返信
2016.01.26 12:31 #1073 NPOYUI
中小企業経営者です。
流石!
勉強になった!
大手企業管理職から、独立13年
ありがとうございます。
明日、アウディが納車、します、
11ヶ月落ち。
2016.01.26 12:39 #1074 Tetsushi Hoshikawa
#1074への返信
2016.01.26 12:39 #1074 Tetsushi Hoshikawa
こんにちは。かなり昔の記事なのですが、まだ税制としては変わっていないので、そのまま使えると思います。
独立13年ということで、おめでとうございます。私の方は今ちょうど10年目を迎えるところです。継続は力なり、継続していくのが本当に難しいですね。
ちなみに、11ヶ月落ちだと減価償却としては変わりませんね…。せめて1年経っていると違うのですが。
2016.01.26 13:19 #1075 NPOYUI
#1075への返信
2016.01.26 13:19 #1075 NPOYUI
ホシカワ様ありがとうございます。耐用年数6年11ヶ月落ち計算
(72-11)+11×0.2=63.2/12=5.26年
決算期6月、償却率0.5.
1200万×0.5×5/12=250万です
2016.01.26 13:50 #1076 Tetsushi Hoshikawa
#1076への返信
2016.01.26 13:50 #1076 Tetsushi Hoshikawa
なるほど。ご説明ありがとうございます。なかなかちゃんと考えられている経営者が少ないですね。儲かったから、車買っちゃおう的なコメントをよく聞きます。
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