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2021.07.22
iPhone 12シリーズから搭載されたMagSafe機構は、これまでのワイヤレス充電の問題点を解決したシステムであり、同時にiPhone自体がマグネットで吸着するようになったことにより、さまざまなアクセサリーの余地が出てきたという意味で、とても面白い展開になったと感じています。この機構は私はかなり昔にNexus 5で体験していて素晴らしいと思ったのですが、いかんせんデバイスの利用台数が少ないためアクセサリーの展開はあまりされていなくて、Google純正のアクセサリーしか使うことができませんでした。
MagSafe機構を活かしたApple純正モバイルバッテリー登場。
Appleが満を持して発表したMagSafeバッテリーパックが登場しました。「満を持して」というのもiPhone 12シリーズの発表と同時に紹介されても良さそうな製品なので、もうすぐ1年が経過して次のモデルの話が出てきたあたりでリリースされたというのは、何かしらトラブルがあったか、用意周到に開発してきたかのどちらかになるかと思います。なお、このタイミングでMagSafeアクセサリーを出してくるということは、次期iPhoneでも引き続きMagSafe機構が搭載されることでしょう。
さて、私は自分自身が使うか否かというのとは別に、Appleがどのような思想でどのようにアクセサリーを作るのかということに興味があるために、新しいカテゴリーの製品はほとんどの場合購入して試してみています。製品自体やその構造、素材、仕上げなどAppleから学ぶこともとても多くありますし、逆にどうしてAppleなのにこういう製品にしてしまうんだろうかという疑問を持たざるを得ない製品もあります。
今回は後者の方でした。
そもそも、スペックを見た段階でどうなんだろうかと疑問点が多くありましたが、念のため購入してみて思いは変わりませんでした。まずはMagSafeバッテリーパックの良いところと悪いところを整理してみました。
MagSafeバッテリーパックの良いところ
- Apple純正なので動作の安定性や安全性は高いと期待できる。
- iPhoneシリーズ初のリバース充電対応で、iPhoneからMagSafeバッテリーパックへ充電可能。
- iPhone側、MagSafeバッテリーパック側のどちらにもLightningケーブルを通じて両方充電可能。
- MagSafeバッテリーパック側にLightningケーブルで給電すると15Wでの給電が可能(20W以上のUSB PD対応充電器が必要。説明文では27Wという記述もあるので混乱させる)。
- ワイヤレス充電でAirPodsも充電できる。
- iPhone側からバッテリー残量を確認できる(ただし書きあり)。
- Appleロゴが入っている。
MagSafeバッテリーパックの悪いところ
- バッテリー容量が少なすぎる。
- 充電スピードが遅すぎる。
- バッテリー残量がMagSafeバッテリーパック単体ではわからない。
- 価格が高すぎる。
- 価格が高いのに、高級感がない。
書き出してみると、数としては良いところの方がように思いますが、実用的に考えて良いと思われるところはほとんどないと思います。ユーザーは何を欲しているのかと考えれば、それは「iPhoneのバッテリー切れを防ぎたい」という一言に尽きるのではないでしょうか。そこから考えると良いところとしている項目は物足りないと思います。
良いところから書きます。
1と2はブランディングなので、直接的にはユーザーに恩恵をもたらしません。2と3は1本のLightningケーブルからiPhone本体とMagSafeバッテリーパックを両方充電できるので、これは使い勝手に大きく影響します。ただ、元々のユーザーの要望には直接的には沿わないと思います。4についてはそもそも電源のないところで充電したいのでモバイルのバッテリーパックを使用するわけですから、給電できるならばそのまま充電した方が良いですね(2と3のようにその際に両方充電できるというメリットはあります)。5に至っては、一応書いてみましたが、あまり意味がないと思います。また、近いうちにiPhoneからAirPodsにリバース充電できるようになると思いますので、そうすると完全に意味がなくなると思います。
次に悪いところを見ていきます。
バッテリー容量が足りない。
繰り返しますが、ユーザーが欲しているものは「iPhoneのバッテリー切れを防ぐ」ということです。そこからすると、iPhoneをフル充電できないようなバッテリーは緊急用途としては良くても、本来の目的を達しない場合が多いのではないでしょうか。iPhoneを充電したくなる時とは、iPhoneのバッテリー残量が足りなくなり、これから使っていくのに不安、次に充電するまでの間に切れてしまうのが不安というところです。そこから考えると、せめてiPhone 12 Pro Maxまではいかなくても、他3機種では100%充電できる容量が欲しいです。
MagSafeバッテリーパックのサイズは約95 x 64 x 11mmで11.13Wh、先行して発売しているAnker製MagSafe機構対応モバイルバッテリーは約93 x 63 x 16mmとほぼ同じサイズながら、5000mAhとの記載から考えると3.7V換算で18.5Whとなります。iPhone 12シリーズで1番容量が少ないiPhone 12 miniは8.57Whですからフル充電可能に見えますが、実際にはバッテリーから充電までの電力のロスとワイヤレス充電によるロスで0%から100%までフル充電することができません。
充電スピードが遅すぎる。
MagSafeという規格は最大15Wでの給電を可能にしていて、磁石により位置が固定されることと併せて、ケーブルを接続しなくても比較的高速に充電できることがポイントです。しかし、このMagSafeバッテリーパックは充電が標準では5Wに制限されています。5Wといえば、今や付属の電源ですら採用されていない古いiPhoneの充電器が同じスペックです。5Vでいえば1Aの電流を流す、非常にベーシックなパワーとなりますが、今では非常に低速な充電といえます。
バッテリー容量のところでも書きましたが、実際にはロスもあるのでこのスペックで給電するという意味ではないため、実は電力不足でMagSafeバッテリーパックを装着しているにもかかわらず、iPhone側のバッテリー残量と稼働状況によっては、バッテリーに充電することができない、場合によってはバッテリーが減るということもあり得るのです。
その他、本当に求めているのはこれではない。
前述のバッテリー容量とバッテリーへの充電スピードが2大問題で、挙げられる項目の数ではなく内容としては大きな大きなものです。それ以外にも、ぱっと見でバッテリー残量がわからないことや、プラスチックの質感があまり高くないこと、何よりもApple価格なので高すぎることが悪いところとして挙げられます。
価格については絶対価格ではなくて、価値によって判断すべきだと考えていて、世の中に存在する同様の製品と比べて何が優れているかというところによるかと思います。その意味では、いくつかの点においてApple純正MagSafeバッテリーパックにしか実現できないこともあるので、付加価値はあると思っています。しかし、それでも元々の目的を達成するための基本機能があまり優れているとはいえないと思います。
iPhoneに本当に欲しいバッテリーパックはこれではないか。
MagSafeは素晴らしい機構だと思いますし、これから幅広い活用方法が我々を含めたサードパーティーからリリースされ、iPhoneをより便利にしてくれるようになると思います。しかしながら、充電について、特にこのMagSafeバッテリーパックについては、無理矢理MagSafeを使おうとしているように思います。
長々と書いてきて、ここで我田引水となりますが、iPhoneに本当に欲しいバッテリーパックとはこれではないでしょうか。
NuAns TAGPLATEの良いところ。
- iPhoneをフル充電できる。
- iPhoneを高速充電することができる。
- 充電中にケーブルが邪魔にならない。
- 充電していない時にもケーブルが邪魔にならない。
- カラーバリエーションや素材バリエーションがある。
- MagSafeバッテリーパックと比べれば相対的に価格が安い。
- AirPodsシリーズにLightning経由で給電できる。
ここで挙げたのはMagSafeバッテリーパックに対しての比較となります。結局のところ、無理矢理ワイヤレスで充電しなくても、ケーブルが邪魔になるということもなく、収納時にもケーブルが邪魔にならないので無理にケーブルを無くさなくても良いというのが現状です。
将来的にMagSafeバッテリーパックを含めて、ワイヤレス充電がケーブル接続を上回るスピードを得られるようになるのであれば、ケーブルはない方がいいと思います。しかし、現時点ではワイヤレスにしてしまうと大きなデメリットがありますので、私自身も当面はNuAns TAGPLATEを持ち運ぶことが一番の安心を得られると考えています。
★
ちょっと批判的になってしまいましたが、MagSafeバッテリーパックについても一定の需要はあるかなと思います。とにかくシンプルにケーブルがなく、充電スピードは求めずに簡単に給電でき、バッテリーに充電する際には1本だけケーブルを挿していれば同時にiPhoneも充電できるというところなど、用途によっては選択肢になるかなと思います。
実のところ、もうひとつ私だけがMagSafeバッテリーパックを使いたくない理由があって、それはMagSafeカードウォレットを使用しているからです。これを外さないとMagSafeバッテリーパックで充電できないのですが、そうすると充電している間にこのカードウォレットはどこにいるのかという問題が出てくるからです。そういう面から見ても、NuAns TAGPLATEは私にとって最適なモバイルバッテリーなのです。
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このブログを書いたスタッフ
プレジデント
ほっしぃ
音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。
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コメント
2022.09.17 05:03 #544370 ryo_hatsugen
#544370への返信
2022.09.17 05:03 #544370 ryo_hatsugen
Appleのプレゼンも悪いとは思いますが、11シリーズの時に出ていた、Smart Battery Caseと同じく基本的にはずっとつけっぱなしにしての端末の拡張バッテリーとしての使い方を想定しているのだと思います。
ですので、他のモバイルバッテリーのように電池減ってから充電する使い方では失敗作ですが、ずっと繋げっぱなし運用ですと付けてない運用に比べて、電池に余裕ができます。
バッテリー消耗が激しい使い方にはなりますが、AppleCareに入っていれば80切れば無料で端末交換するわけですし。
本体の拡張バッテリーとしての運用を考えたモバイルバッテリーは他にはなく、拡張バッテリーということを考えればリバース充電としての強みも出ますし、
悪いところとして指摘されている2や3はそれほど悪いものでもないと思います。(別に充電速度が遅くても、電池もちが長引けば拡張バッテリーとしては問題ないし、拡張バッテリーなのだから、端末から残容量が見れれば問題ないです)
自分自身も本体のバッテリー容量の拡張としての運用で繋ぎっぱにして使ってますが、実用に問題ないですし(明らかに本体の電池の長くなってます。)、モバイルバッテリーの煩わさには解放されました。
(本体とバッテリーと分けて充電したりとか、忘れたりしてしまうとか、わざわざケーブル出して繋げたりなど)
2022.09.18 19:11 #544574 ほっしぃ
#544574への返信
2022.09.18 19:11 #544574 ほっしぃ
ryo_hatsugenさん、書き込みありがとうございます。
拡張バッテリーとして常にくっついている状態を想定するということですね。
人それぞれいろんな使い方があるかなと思うので、満足されている方もいらっしゃるのだと思います。
この記事は私の主観が大いに入っているので、人によっては見方が異なりますね。
新しい見方をコメントしていただき、ありがとうございます。
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