ものづくり零細企業における、中国での接待現場の真実とは

2019.08.24

起業してから14年目、中国でのものづくりは11年ほどになります。とはいえ、初期の頃はそれほどものづくりという大きな活動ではなかったのですが、段々とニーズに対して応えることや、自分たちで使いたいものを作るようになってきてからは、多種多様な中国企業と付き合ってものづくりをしてきました。

今回の話は、もしかすると当社だけの事情かもしれません。他社がどのような形で接待に臨んでいるのか分からないので、「ものづくり零細企業における」と題しましたが、実際は当社だけの話かもしれないということはお含み置きの上、お読みください。ウチは違うというクレームは、コメントにお寄せください。

特にNuAns、その中でもNuAns NEOなどのかなり高度な製品を作る場合、これまで10年以上に渡って長く付き合ってきたケースだったり保護フィルムや保護ガラスの工場とは別に、新しい工場との付き合いとなります。一般的に言えば、中国の工場は量産には向いているものの、日本の工場のように小ロット多品種を嫌います。工場側からすれば、10種類を1,000個ずつ作るよりも、1種類を10,000個作る方が割が良いというのは当然の話です。日本は中国企業の傾向を逆手に取って、小ロット多品種で勝負する場合が多くあります。

我々は大企業ではないし、どこかから投資を受けて開発しているわけでもないので、限られたリソースの中で、量産する場合にもいかに製造ロットを引き下げるかが死活問題となります。企業規模が小さいので、大量にオーダーして、もしも売れなかった場合には、不良在庫の山を築き上げてしまい、万が一には倒産の危機に陥る可能性もあります。

これはNuAns NEOのようなスマートフォンを作るときでも同じです。自分の理想とする最高の製品にできるというアイディアはしっかりと持っているものの、当然、ソニーやシャープなどのような会社と同じような開発費や人員もないですし、キャリアが展開してくれるわけでもないので大量の発注数でもありません。これが何を意味するかというと、我々のようなクライアントは工場からするとそんなに良いお客さんではないのです。今まで作ったことのないような製品を作らされ、ものすごく細かいところまで掘り下げて指示してくるのに、開発費も少ないし発注数も少ないのですから、これは仕方ないところです。

ここで本題になります。察しの良い方はタイトルを読みつつここまでくれば分かりますね。

中国における接待とは、中国工場から我々への接待ではなく、我々から中国工場への接待なのです。我々の目的はただひとつ、製品開発と量産を引き受けてもらうこと、もしくはプロジェクトがスタートしてからは円滑に進むようにしてもらうことです。中国の会社はトップダウンが強いので、幹部がその気になってくれると無理でもやってくれることが多いのです。

ポイントとなるのが下記の3つです。

  1. 製品が魅力的であると認識してもらうこと
  2. もしかしたらたくさん売れるかもしれないと夢見てもらうこと
  3. 日本企業とうまく製品作りができれば世界でも通用するようになること

1つ目はいつも成功します。製品について、顧客にプレゼンするようにコンセプト、機能面、デザイン面など今までに無いようなものだということは理解してもらいます。

1つ目が成功すると、2つ目は市場規模や製品の優位性などを話しながら、「これはもしかしたらすごく売れる可能性があるかも?」と夢見てもらいます。実際に私自身も大きな可能性を抱きながら製品開発をしているわけですが、場合によっては細かいチャネル政策も伝えて具体性も持たせるようにします。

3つ目が結構大事で、私が特にものすごく細かくマネージメントします。もしかしたら当然かもしれませんがいつも嫌がられるのは、「確認して後で回答します」というのに対して、それは具体的に何日のことかと確認し、たとえば明後日ですとなれば、明後日の何時かと問い詰めます。「後で」などと曖昧なことを受け入れたらいつまで経っても次のステップに移れません。また、たとえ日付で言ってきても、何時なのかが分からないのとお昼なのか、夜なのか、夜中なのかも分かりませんので、催促することもできません。結果、翌日になってしまうことがあるからです。こういうマネージメントをしていくと、開発期間はグッと短くなり、プロジェクトとして早く市場に投入できるようになります。

さて、これらを理解してもらった上でやらなければいけないことが、「食べて、酒を飲みまくる」です。ここまでは交渉の範疇で、これが接待の本番です。

私の経験上、中国の社長はたいてい、何かしら美味しいものを食べさせて、一緒にお酒を飲むことで親近感を持ちます。そして、多くの社長が英語を喋れません。なので、私とのダイレクトのコミュニケーションはできないのです。ですから、料理屋に行っても社長がこれは美味しいから食べてみなさい、というのを料理が来るまで予測できません。私は食べ物には保守的なところがあって、これは無理だなぁと思っても我慢して食べて、美味しい(フリ)というアピールをします(ものすごく喜びます)。

そして、極めつけは酒です。だいたいビールは水のようなもので、白酒や高い茅台酒を出してくることが多く、それを私が飲んで酔うのを見たいのです。前述のようにコミュニケーションはできませんから、少し時間ができると「乾杯」と言ってきます。中国の乾杯は文字通り「杯を乾かす」ということですから一気飲みです。

その場にいたら、特に飲みたくなくても盛り上がる必要があります。

実のところ、私は普段お酒をまったく飲みません。しかし、この時は勝負所ですから飲みまくります。ほとんどの場合、嘔吐やグロッキーになってしまいますが、接待ですから仕方がありません。これで製品ができるならば、一時の苦しみは大したことがありません。

これは私だけではなくて、当社開発チームではよく発生することです。一度は価格交渉をウイスキーの飲み比べでやり、当社開発担当かんかんがなんと20杯以上飲んで勝ちまして、見事コストダウンに成功しました。

このような「接待」を経て、NuAnsNuAns NEOが生まれてきたのです。今も、新規プロジェクトをやっていますが、新しい会社ですので同じことをして進めています。だいたい、ホテルに戻って死にます。しかし、それが製品を生み出すために必要なプレセスだとしたら、それで円滑に進むのであれば望むところです。

他の会社はこのようなことをしているのか、とても興味がありますので、同業他社でも、中国でものづくりをされている方からの情報をお待ちしております。

このブログを書いたスタッフ

プレジデント

ほっしぃ

音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。

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