CES 2019で感じたトレンド

2019.01.13

投稿者 : ほっしぃ

2019年のCESでは、当社としてのブース出展はなく、毎年のように準備から展示、片付けまでのさまざまな対応の合間を縫ってのブース視察と違い、じっくりと見て回ることができました。CESを視察に行く目的としては、下記の通りとなります。

  • テクノロジーのトレンドを掴む
  • 競合他社の動向を見る
  • 新しい技術やサービスを出している新興企業を見つける
  • 自社製品に組み込める技術やパーツなどを探す
  • 自社製品を開発委託、または製造委託できるODM会社、EMS会社を見つける
  • 当社取り扱いブランド(Catalyst、Bluelounge)のメンバーとのミーティング

当社のビジネスにも関わるので、一部の目的については詳細を語ることができないところもあります。ただ、CES 2019ではいくつかダイヤの原石を見つけることができたので、全体として満足できた展示会でした。

さて、それだけだと記事を書いた意味もないので、CES 2019の全体的な所感だけ書いておきたいと思います。私はメディアというわけでもないので、1メーカーとして、1消費者としての視点になりますので、いわゆる単なる感想と思って読んでください。

CESは、大きく分けると、メインのラスベガスコンベンションセンター(LVCC)とサンズエキスポ(Sands)の展示会場と、その他ホテルなどの中でのカンファレンスやミーティングなどが行なわれている部分となります。今回は、限られた時間の中で上記の目的を果たすために、LVCCと隣接したWastgateホテル内、Sandsと隣接したVenetianホテル内に絞りました。

LVCCという会場はNorth、Central、そしてSouthに分かれていて、それとは別にCentralの前あたりに仮設テントのブースがあります。さらに、溢れたという言い方は失礼かもしれませんが、South Plazaという巨大なテントに工場系のブースが軒を連ねているエリアがあります。
ちなみに、展示会といえば、みなさんの印象としても、大きな展示会場があってそこを見て回るということがあると思います。しかしながら、メディアの方に聞く限り、ブースは出していないものの、プライベートにメディア向けカンファレンスを開催していたり、ミーティングルームやホテルの一室で個別に招待制で新製品を展示するというメーカーもありますので、すべてのメーカーの製品を見られるわけではありません。

・車関連の拡大

我々が出展をしていた頃には縮小気味だった車メーカー及び車関連企業のブースが占める割合がとても大きくなっていました。LVCCのNorthホールはすべて、またWastgateホテル内の方にも溢れていました。特にアメリカは車社会だということもあったり、車メーカーはどこも有名なブランドばかりで、予算も大きいためにブースが巨大なところが多くありました。

このNorthホールはかつて、Macworld Expoというサンフランシスコで開催されていた展示会に出展していた我々のようなApple関係アクセサリーメーカーが、Appleの出展取りやめによってMacworld Expoが一気に衰退して行き場を失った際に、同時期にCESでは車関係特にカーオーディオが急速に衰退していっていて、ブースが埋まらなくなってきていたため、CESの主催側との思惑が一致して、一気にMacworld Expo組が移住してきたエリアでもあります。

Apple関連アクセサリーはSouthの方に強制移住させられ、再び車関係のブースばかりになっていたNorthホールを見ると、なにか感慨深いものがあります。

車関係は、正直なところ私自身が車に乗っていなくてそれほど興味もないことから、そこまでしっかりと見たわけではありません。印象としては、日本メーカーは真面目、海外メーカー特に中国や韓国メーカーは派手というものでした。

日本メーカーはしっかりとした実現可能な技術を展示していて、中国・韓国メーカーは夢を見させるような感じで、かなり性格が出ているように思いました。欧米メーカーもどちらかというと後者に近いような印象ではあるものの、ちょうど中間くらいの印象でした。
車メーカーも、車そのものでの訴求というのはさすがに枯れてしまっているのか、コネクテッドカーだったり、自動運転だったりという展示ばかりで(CESなので当たり前と言えますが)、どこも横並びのような印象がありました。

・テレビは8Kと曲がるディスプレイ

Centralホールはかねてよりテレビが主役のホールでした。今年もかろうじて8KとOLEDの曲がるディスプレイなどで注目を浴びるようにはなっていたものの、全体としての盛り上がりには欠けていました。唯一、LGは見せ方がうまくて、絶対に家庭などでは見ることはないだろうというようなシチュエーションで見せて、注目を浴びていました。

逆に、シャープは昨年業績不振などもあって出展を取りやめていたものの今年復活。しかし、予算が限られているからなのか、普通のブースに普通に製品を置いているだけなので、同じ8Kテレビでもまったく人が集まっていないところが印象的でした。

ちなみに、Centralホールは、今でこそCentralと呼ばれているのですが、昔はSouthというホールだったそうです。展示会場が拡張して現在のSouthホールができたときに、NorthとSouthだったところから、もうひとつできたために、拡張したところをSoutchとし、当時Southだったところ(現在のCental)をCentalとしたとの豆知識を教えていただきました。

Centralホールはもうひとつコンピューター周りの出展もまとまっているエリアです。ただ、私が通っていた10年弱くらいの間にも顔が入れ替わっていて、Microsoftはブース出展自体はしなくなっていて、Intelが唯一頑張っているものの、その前には中国家電メーカー(初めて見たブランドです)だったり、Qualcommがいるのも時代の流れを感じさせます。いわゆるコンピューターが中心なライフスタイルはかなり頭打ちとなったのだと言えるのでしょう。

・AIと付ければ新製品

全体的に、製品やサービスにAIとかAI poweredと付ければ、これまでとほとんど変わっていない、もしくはほんの少しプログラムを改良したものであっても、新製品かのように展示しているブースが多く見られました。

AIとは何か、という議論に入ると長くなってしまいますのでここでは割愛したいと思います。ただ、マーケティング的にAIと付けておこうというような風潮がCESでも蔓延していることは憂うべき事態ではないでしょうか。

また、いわゆるAIキーワードと並んでセンサーによるセンシングも大きなトレンドのひとつでした。自動運転はセンサーとカメラの塊だとも言えますし、その他、いろいろなところでセンサーが活躍するようになってきました。スマートフォンもセンサーの塊ですが、段々とセンサーが安価に調達できるようになって、さまざまな製品に組み込まれるようになりました。

しかし、どうも1センサーのアイディアで1つの製品にしてしまうところが多くあり、あれとこれを同時にやりたいのに、というトータルなソリューションが少なく、それぞれを別々に使っていかなければいけないというところはまだ過渡期にあるからなのだと思いました。

・アイディアのるつぼ

Sands ExpoホールはLVCCから少し離れた場所にあり、歩いていくと3, 40分かかることからバスで移動していきます。過去にはLVCCから溢れた出展者がほんの少し出ているという印象のあったSandsホールですが、最近はむしろCESはここがメインではないかと思わせるような出展者とその数になってきています。

昔はかなり小さかったエリアだったのが、LVCCに匹敵するのではないかと思わせるくらいの広さになりました。

ずっとブースを出展してきたので知っていることですが、(どこの展示会も基本的には同じとも言えます)CESはどれくらい長く出展してきているか、どれくらいの大きなブースを展開するのか、によってブースの位置を決める権利の優先順位が決まります。

したがって、ここ数年に設立されたような小さなメーカーだと、元々のメインであるLVCCの出展を勝ち取ることは困難です。その理由もあって、Sandsホールには小さなメーカーがたくさん出展しています。それこそ、前述のような1アイディアで会社を立ち上げたようなところが多くあります。

まだまだ、これでビジネスとして成り立つのかなと思わせるようなところも多い中、たまにこれは面白い、と思わせるようなところを見つけるのが展示会の楽しいところです。

今年のSandsは1階はかなり大きく国別に分かれているエリアと、カテゴリーで分かれているエリアがあり、フランスの会社が軒を連ねる「French Tech」が最大の規模を誇っていました。昨年は正直、端っこの方で目立たなかった日本エリアも、今年はとても注目を浴びていました(ただ、たまたま私が見に行ったときだけかもしれませんが、半分以上の来場者は日本語を話していました)。

J-Startupというエリアは、たくさんの人で賑わっていました。
Shiftallが展示していた、ビール用冷蔵庫と配達サービス。リビングに置いておくにもデザインとしてマッチするのが良いですね。

・衰退したハードウェアのみ、もしくはケースやケーブルなどの単機能ハードウェアブース

我々が移住してきた頃は、スマートフォンが広がりを見せてきていて、iPhoneアクセサリーも多く展示されていました。特に、これでもかという程たくさんのケースメーカーが出展していました(当社もそのひとつでした)。しかし、今年はそれだけでは生き残っていけないのか、ケースだったりケーブルだったりの単機能のハードウェアのブースは激減したと思います。その意味では、我々も出展しなくなったのはその流れと同じです。

Catalystは完全防水や耐衝撃といった、他とは違う製品を作っているため、毎年ビジネスが拡大しています。
ブースにはたくさんの来場者がいて、いろいろとスタッフに質問をしていました。
Blueloungeも地味ながら、端末に依存しないアクセサリーのため長く販売し続けている製品が多いのが特徴です。

今後は、CESに出展するようなメーカーは、単機能のハードウェアだけでは勝負していけないので、何かしら新しい付加価値、ほとんどの場合は何かしらコネクテッドだったり、ソフトウェアと組み合わせることで新しい体験を生み出すようなところに限られてくると思います。
それにしても、そのような危機感があるはずなのに、我々の国のご近所、特に世界一の人口を誇る国の方々のブースのやる気の無さはいつもながら苦笑いが出てしまいます。アメリカまで来ているのだから必死に新たな顧客を捕まえようと頑張らなければいけないのだと思いますが、どうもやる気が感じられません。お昼時などはブースで全員でお弁当を食べるのに必死で、こちらには見向きもしてくれませんでした(笑)

近寄ってもまったくこちらを見てくれません。なにしにラスベガスまで来たのか…。
食べながらスマートフォンに夢中です。そもそも製品もほとんど並んでいません…。

CES 2019の期間中、毎日ランチと4時くらいの少しの休憩以外はすべてブースを見て回るというほどに歩き回ったものの、それでももっと時間をかけたかったところなどがあり、CESは4日の会期では回りきれないということを再認識しました。ブースで面白いものを見つけて、そこの人たちを話し始めるともう時間がいくらあっても足りません。今後はもう少しテーマを絞って、ほとんどビジネスとしては関係ないNorthホールなどは最後に本当に時間が余ったら、というようにする方が良いと思いました。

それでも、冒頭に書いたとおり、ダイヤの原石を見つけたり、その他の目的もおおまか達成することができたので、また来年も参加したいと思います。そして、いつかはまた、大きなプロダクトを携えて再出展できるようになると良いなと思います。

ラスベガス空港で到着してから荷物を取りに行くところにあるゲート。この写真を毎年撮っている気がします。

このブログを書いたスタッフ

プレジデント

ほっしぃ

音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。

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