【原価マスクのすべて(3)】原価マスクを構成するコストとパッケージ表記の苦労

2020.04.30

原価マスクというのは、その名の通り「原価のマスク」です。製品自体の手に入りにくさと価格が高騰しているマスク市場に対して、私たちができることは何かと考えた際に、私たち自身では利益を取らなくて良いから、安価にマスクを供給したいというのが始まりです。この点については、「【原価マスクのすべて(1)】原価を販売価格にした「原価マスク」登場。日本のマスク難民を救いたい。」で書き記しました。

今回は、その「原価」について解説したいと思います。製品ページでは「原価=販売価格」ということで表示していますが、まずはそれぞれの費用について説明していきたいと思います。

原価とはなにか

原価とはいろいろな意味があり、用途によって分かれます。厳密な意味では原価とは違うのかもしれませんが、私たちが原価と言っているのは「仕入にかかる費用(直接原価)」のことです。つまり、下記に記述するような、仕入価格、輸送費、倉庫手数料、カード決済手数料、などの費用を「原価」と呼び、その原価のまま販売するというのが原価マスクです。

仕入価格

私たちが中国の工場から購入する価格です。これには、マスク本体、個包装、パッケージ、パッキング、出荷用段ボール、出荷作業まで、工場から出荷までのすべての費用を含みます。いわゆる「Free Carrier(FCA)」の状態で、当社が手配した運送会社が工場まで引き取りに行き、積み込みを終えるまでが中国工場の責任となります。

今回、当社から中国工場への注文書である「Purchase Order」と工場からの注文請書としての「Proforma Invoice」を掲載します。通常はこういうものは開示しませんが、今回は原価をうたうということもあって特別に開示しておきます。工場との個別契約になるため、価格は他の顧客と異なる可能性が高いので工場名はここでは塗りつぶしています。

なお、中国と日本の取引のほとんどがアメリカ・ドルでの支払いとなるため、当社は日本円からアメリカ・ドルを購入して支払うことになりますので、支払いをしたときの為替レートも開示しておきます。日本円からアメリカ・ドルへの通貨交換はTTSというところの表示となります。今回は1ドルを108.83円で購入するということになります。

実際には、これが0.27USD x 108.83円 = 29.38円となり、1枚あたりですので50をかけると1,469円ということになります(USDは「 United States Dollar」の略です)。これが、原価マスクの価格構成にある「仕入価格:1,469円」です。

輸送費

この輸送費は、前述の中国工場に引き取りに行き積載してから、当社委託の埼玉県志木市にある倉庫までの配達運賃、通関手数料などの諸経費をすべて込みにした金額です。1枚あたりのコストとして3円、50枚で150円ということになります。

私たちはこれまで、スマートフォンアクセサリー関連製品はモバイルバッテリーなど一部の製品を除き、飛行機での輸送を行なってきました。今回は、できる限りやすくしようという意図があるために船での輸送としました。ただし、あまりにも時間がかかっては困るので、比較的早めの船便にしています。中国広東省深圳市からトラックで上海に向かい、その後に日本まで船で運ばれるルートです。

昨今、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の問題で旅客機の運航が激減し、船に輸送が集中してきたことにより、非常に混雑し始めたこともあり、費用も上昇傾向なのが心配なところです。ただ、逆に私たちはほとんど船便を使っていなかったので実績が少なく、かなり高い料金になってしまっている可能性はありますので、これは今後実績を積みつつ交渉次第で下がる方向もあり得ると思っています。

関税

中国から日本に不織布マスクを輸入する際にかかる関税は4.7%です。これは仕入価格の0.27ドルに為替レート108.83円をかけた29.38円に対して課税されます。したがって、1枚あたり1.38円で50枚なので69.05円となります。

実際には日本の税関に入ってきたときの為替レートが適用されますので、私たちがアメリカ・ドルを手に入れたレートとは異なるため、その時よりも円高になっていれば関税の金額は下がりますし、その逆であれば上がるという、博打的要素があります。

今回、さすがにこの幅をコストとして計算することはできないので、幸運であればコストが下がり、悪運であればコストが上がり損失になることになります。通常製品であればある程度の余裕を持たせて計算するので、こういうことで一喜一憂はないのですが、今回は原価で販売ということにしているので、ここらへんの些細なことでも損失になってしまいます。

倉庫手数料

前述の通り、倉庫は外部のパートナーに業務を委託しています。この倉庫手数料には、入荷時のパレットからの開梱、数量確認などの入庫作業、出荷のためのピックアップ、納品書の印刷から封入、梱包資材、梱包作業、送り状の出力から貼付、送り状番号の報告までの作業を含んでいます。

ここの金額は原価構成表の中で200円と記載されていますが、実際には228円という見積もりで計算しています。なぜ228円ではなくて200円にしたのかは後述します。

カード決済手数料

原価マスクではできる限りのオペレーションコストを削減するために、通常当社オンラインストアで用意している銀行振込や代引きなどの決済方法は止め、クレジットカード決済のみに限定させてもらっています。一部の方にはご不便をお掛けしますが、なにとぞご理解くださりますようお願いいたします。原価の話とは直接関係ありませんが、Amazon Payで支払いをしてもらえれば5%還元の対象となります。

銀行振込というのはとても手間のかかる支払方法で、ユーザー側にとっても振込手数料がかかったり、当方でもどの入金がどの注文に紐付くのかを突き合わせるという作業など、大量の処理には向かないのです。また、カード決済手数料を含んでいる販売価格ですので、この分の整合性もとれなくなります。別の価格にするとなると、製品管理、在庫管理上、非常に煩雑になってしまいます。

さて、このカード決済手数料は計算が難しいところで、支払総額に対してカード決済手数料がかかります。つまり、ここまでのコストは積み上げていけば計算できるのですが、カード決済手数料だけはその方法にすることができません。

したがって、いったん税込販売価格を設定して、そこから決済手数料を追加して最終的な販売金額を求めています。正直なところ、この計算には欠陥があり、当社が損します。もしかするともっと良い方法があるのかもしれませんが、1日で外箱のデザインデータを入稿しなければいけないときに、すぐに出せなかったのでこの方法で計算しています。

ここまでの1,469円+150円+69円+228円で1,916円となり、税込にすると2,108円です。この金額からカード決済手数料3.24%として68円を算出しています。ここが実際の表記と違う理由も後述します。

ちなみに、カード手数料を価格に含むのはカード規約違反というコメントがあったようですが、例としてJCBカードの通信販売加盟店規約・特約を引用しておきます。つまり、現金での支払いと異なる金額を請求することが問題ですので、カード決済手数料を含んでの販売金額にすることは問題ないという理解です。

第14条(加盟店の義務、禁止行為等)

(前略)加盟店は、会員に対し、現金払いその他の決済手段を利用する顧客と異なる金額を請求したり、カードの取扱いに本規約に定める以外の制限を設ける等、会員に不利となる差別的取扱いを行わないものとします。

JCB通信販売加盟店規約・特約|クレジットカードなら、JCBカード」より抜粋

消費税計算がおかしいとの指摘について

さきほどの計算でこの2,108円にカード決済手数料3.24%(68円)を足すと2,176円(税込)となります。これが実際に最終的な販売価格となっており、この税抜価格が1,959円で217.6円となり、スプレッドシート上の計算式では四捨五入されて218円となります。

まず、消費税が217円ではないかというところについては、小数点以下の四捨五入問題というところです。税抜金額から消費税を計算すると最終税込価格と合わないじゃないかという点についても、カード決済手数料を税込から算出しているため、最終販売価格は税込金額を先に算出しており、そこから消費税額を計算しているためです。

パッケージ表記と実際のコストが違うことについて

この問題が正直なところ、頭が痛い問題でした。

仕入価格、送料、関税、倉庫手数料(228円)、カード決済手数料を単純に計算すると1,984円となります。しかし、販売価格2,176円から218円の消費税を引くと1,958円となります。ここからさらにカード決済手数料68円を引くと1,890円となり、もろもろ辻褄が合わないのです。

これはカード決済手数料が税込金額に対してかかることと、税込金額に対して消費税額を計算して算出していることによる差です。コスト計算をするGoogleスプレッドシートで税込金額の10%を計算して、そこから引いたのでずれてしまったようです。

マーケティングの担当と私で計算が合わないことが最初には理解できずに、計算を何度も見直していきましたが、結局のところはうまく合いません。普段は原価を公開していないため、多少ずれていても問題ないところがありますが、今回はどうしても原価構成を表記したいという思いがありました。

そのために、倉庫手数料とカード決済手数料を「調整して均した」数字に変更しました。倉庫手数料でいえば表記している金額は28円安く、カード決済手数料は実際よりも2円高く表記しているということになります。その意味で、コストを高く見せているということはなく、むしろ損する方向になっています。

正しくないじゃないかというご指摘はあるかもしれませんが、為替レートも支払時期で変わったり、関税もタイミングで変わります。原価構成をわかりやすく表記するという目的に対しては、役割は果たしているかなと思っています。

ただ、ここらへんの計算に得意な方が良い方法を提示していただけるのであれば、検討してパッケージの変更もしていきたいと思いますので、是非ともコメントをお願いします。

送料について

送料は、当社が通常お願いしている佐川急便からの請求をそのまま送料として別途請求するようにしています。通常製品は500円ですので、ほんの少し安くなっているかと思います。複数個買っていただくことで送料は相対的には減るのですが、まだ原価マスク自体の価格に対しては割合が高いと思います。

パッケージサイズが205 x 120 x 100mmとそれなりにあるため、安価なレターパックのようなものでは発送できないのです。こちらも何か良いアイディアがあれば検討したいと思いますので、教えていたければと思います。

利益、間接費、その他かかる費用

ここまで説明してきて、当社の利益が計算されていないのは理解していただけたかと思います。また、いわゆる間接費(私も含めた当社の人件費や中国での監査人件費や交通費など)も一切含んでいません。さらには購入のためのオンラインストア仕様変更の開発費やサーバー増強の費用なども含んでいません。

これらは当社にとっては支出になるものの、販売価格に含んでいませんので実質損失になります。ただ、今回の趣旨から、この分は「寄付」に相当する部分かなと思っています。

トリニティにとってのメリットは何か

第1回でこの原価マスクプロジェクトを思い立った経緯を書きました。ただ、その「思い」だけで会社のリソースを使って良いのかということも考えなければいけません。社内の人たちが、このプロジェクトに共感して協力してもらえなければ、このプロジェクトは動かすことができません。

また、その「思い」とは別に、このプロジェクトにより当社のことを知っていただき、多少なりとも当社の努力が伝われば、お金には換えられないメリットもあるのではないかと思っています。人に感謝されること、誰かの困っていることを解決してあげられることをできるのは、そんなに多くない機会です。それが私自身の原動力であり、(たぶん、おそらく、きっと、願わくば)一緒に協力してくれた社員たちも理解してくれていることだと思います。

正直なところ、大変なことばかりです。ものすごく時間も使っています(社員には使わせてしまっています)。でも、この「思い」が大切だと思っているからこそ最大限努力しているのです。

本当にパッケージ表記のところは困りました。Googleスプレッドシート上の四捨五入もROUND関数を使っておけば良かったのですが、なにせ夜遅くに最終確認でしたので、もうちょっとうまくできたかなと反省しています。ただ、不当にコストを上げているということではまったくありませんので、そこだけはしっかりと主張しておきたいところです。

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このブログを書いたスタッフ

プレジデント

ほっしぃ

音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。

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